■「障害があり、家庭環境が悪くても、自分の人生を自らの手で歩める社会を作りたい」

 薬物を使用することで、子どもへの影響はあるとされる。法科学鑑定研究所によると、覚せい剤を乱用していた母親から生まれた胎児の尿、および毛髪を出生数日後に採取し検査を行った事例では、尿からは検出されなかったが、毛髪からは覚せい剤が検出された。これにより、新生児薬物離脱症候群(NAS)となる可能性もある。また、厚労省によると、大麻では精子の異常が、シンナーやコカインでは先天異常などの報告もみられる。

 多くの依存症当事者とその家族をカウンセリングしてきた公認心理師の谷川芳江氏は、「当事者自身が回復に向かう選択をしなければ、家族関係を保つのは難しい」と指摘する。「若い世代は『どんな状態の両親でも大切にしたいから』と、悪く言うことに抵抗を覚えている人が多い。また、依存症の知識を学ぶ機会を提供することも大切だ」。

 多母髪さんは「予防教育は必要だが、依存症である本人は、自分がそうだと受け入れない。自助グループや医療機関につながるまでのハードルを、どのように下げていくのか。それが、問題を抱える人が生きやすい社会づくりには必要不可欠だ」といった課題を挙げる。

 依存症の家族として、できることは何なのか。「自分は児童福祉や障害者福祉の当事者として、生きづらさや制度の穴を知った。障害があり、家庭環境が悪くても、自分の人生を自らの手で歩める社会を作りたい。その思いから、講演やメディアで経験の発信をしている。依存症の正しい理解も広めたい」。

(『ABEMA Prime』より)

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