■竹田恒泰氏「困っている人は少ない。いても少数」
選択的夫婦別姓に反対する旧皇族出身の作家・竹田恒泰氏が主張しているポイントの1つが、「困っている人は少ない。いても少数」という点。「旧姓が使えないことで不便を感じている方がいるのは前から問題になっていたが、政府が長年をかけて、旧姓を通称という形で使用できる場面を拡大してきた。経団連が11のトラブル事例を出しているが、ほとんどは手当て済みで、十倉会長も『便利不便の議論は本質ではなく、アイデンティティの問題だ』と開き直っている」と指摘。
懸念されるパスポート問題も少数だと語る。竹田氏は、日本人の年間海外出国数2008万人(2019年)のうち、女性の海外出張者数が49.6万人、別姓選択者の割合を加味すると影響が出るのは4.3万人と算出。「本名と旧姓が併記され、チェックインできないなどの混乱はある。旧姓名1本で取れるようにしようと思ったら維新案がそうなるが、旅券法改正だけで、例えば戸籍などを提出することによってパスポートを旧姓で発行できるように変えることで済む。家族制度そのものを変えるのではなく、旅券法改正や維新案で解消できる」。
一方、賛成派で経団連ソーシャル・コミュニケーション本部副本部長の大山みこ氏は、「通称姓の拡大で救われている方もいらっしゃるが、パスポート以外にもまだ問題はたくさんある。例えば、メガバンクの7割で旧姓の口座を作れるとなっているが、窓口に行くと様々な確認書類を出すという手間が発生している。信用組合や信用金庫とか、住宅ローン、クレジットカードなど付随する金融関係のものも旧姓単独では作れない」と説明。
維新案に対しては、「戸籍に旧姓を記載するというのは、届け出をした人がオプションでつけられる形なので、やはりダブルネームの問題がある。これは今、マネーロンダリングや不正取引が懸念される中で、企業としては死活問題だ。維新はダブルネームにならないと言っているが、その根拠が可視化できていない」と指摘した。
同じく賛成派で、一般社団法人あすには代表理事の井田奈穂氏は「旧姓の通称使用で困りまくっている私たちからすると、何を解決したの?と思う。内閣府の第5次男女共同参基本計画を策定する時のパブリックコメントでは、672件のうち400件が選択的夫婦別姓を求める声だった。公聴会でも困りごとが来るし、反対意見は0だった」と主張する。
これに竹田氏は「その400件は、困っている人が積極的に意見を出したもの。法律の政策は、得られる利益とコストを計算する。例えば、10の利益があっても、30の負担があったら認められない。私がずっと言っているのは、社会的負担も大きいということ。パスポートに関しては、旅券法改正だけで解決できる」と再度訴えた。
■反対派の麗澤大学教授「維新案に賛成ではない」
