抽選制でより公平に?マーケットデザインで読み解く
【映像】備蓄米を求め長蛇の列に並ぶ人々
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 随意契約の備蓄米が人気を集め、店頭やネット販売でも争奪戦状態となった。

【映像】備蓄米を求め長蛇の列に並ぶ人々

 購入にかける労力や時間は、社会的な損失ではないのか。

 開店前から長蛇の列。ネットでは販売開始早々に売り切れ。販売開始に合わせてスマホを連打してもアクセスが殺到してつながらず、それでも購入できないことも。

 5kg2000円程度で販売されている随意契約の備蓄米だが、入手する労力が大きすぎて、購入自体をあきらめたという人もいるのではないだろうか。

 そんな中、販売方法を抽選制に切り替えたのがLINEヤフーだ。

「(通常販売・予約販売だと)うまく買えない。システム面でも不便をかけたというのもあり、これだと元々目指していた『全国の多くの人々に平等に販売したい』ということが実現されないため、急ピッチで抽選販売のやり方・フロー・システムを整え、6月17日から抽選販売に切り替えた」(LINEヤフー株式会社ショッピング統括本部 事業企画本部 杉本務本部長)

 先着順か抽選制か、そして多くの人が手に入れるための望ましい制度設計をマーケットデザインの研究者・野田俊也氏に聞いた。

「長い列に並んだり、“クリック戦争”などが起きたり、そのせいで無駄が発生している可能性がある。今回、これに対応する暇があったかは定かでないので、『うまくいっていない』と批判するトーンではないが、今後のために無駄をどう防いだら良いか議論するのはすごく有益」(東京大学マーケットデザインセンター・野田俊也氏、以下同)

 備蓄米の入手に労力がかかる状況が発生したのは、販売方法が「先着順」であるためだと考えられる。

「先に行ったほうが買えるとなると、先に行くための競争が発生して、先に行くための努力を多くした人のほうが手に入りやすい状況になる」

 メリットとしては、「労力をかけてでも備蓄米が欲しい」という人の手に渡る効果が考えられるものの、やはり「入手にかける労力」が問題になる。

「欲しい人にわたる効果と、買うのが大変になって元も子もない話、この2つのどちらが大きいのかというと、結構広範な状況でコストのほうが大きい。社会全体としてみると、その労力は純粋に無駄になってしまうところが問題。そういう観点では、『労力によるスクリーニング(選別)』は基本的には発生させないほうがいい」

「公平性」も課題に
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