■情が移って連絡しないケースも?

藤原博史氏
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 藤原氏は、1997年にペット専門の探偵会社「ペットレスキュー」を創設した。これまで5000匹以上の迷子のペットを救出し、実際に捜索したペットの発見率は約7割にのぼる。

 アサミさんの経験に、藤原氏は「胸が痛む。5年間継続して捜していると、心身ともに疲弊しているだろう」と寄り添う。「7〜8月は、雷や花火の音に驚いて、それが要因でいなくなるケースが多い。その場合は、通常の失踪よりも移動距離が長く、スピードが速くなる傾向がある。私たちが捜索する場合は、まず気象庁に『その時間・場所で、雷がどう発生して、どのように向かってきたか』を問い合わせる。南側で発生した場合、犬は北側へ失踪する」。

 ひとつの可能性として、「悪意がない」第三者の関与も視野に入れる。「小型愛玩犬が1頭で歩いていれば、犬を飼っている人は『迷子だな』『もしかしたら捨てられたかも』などとすぐわかる。『かわいそうに』と保護して1晩過ごすうちに、情が移ってくる。警察や愛護センターに届け出て、飼い主が現れなければ殺処分されるのではと、あえて連絡しないケースもある」。

 日本では、動物は法律上“モノ”扱いになる。アサミさんは「拾得物として届け出たが、私にとっては家族の一員だ。警察は捜してくれず、『拾得の届出があったら連絡する』程度だ。人間と同等とはいかなくても、生きているし、それぞれに性格や感情がある。モノは置いても壊れないが、犬は2〜3日放置すれば死んでしまう」と嘆く。

■重要なのは「ある程度の危機感を持つこと」
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