■ニセコ町が土地を巡って法廷闘争
ニセコ町の問題だが、原告のA社とニセコ町の間には3つの会社が入っていた。土地はA社からB社、C社、D社と売り進み、ニセコ町はこのD社から購入していた。A社は17年前の所有者だったが、次の所有者だったB社に第三者が勝手に売却したと主張。札幌地裁は主張を認めて、ニセコ町は敗訴した。グローバルウォータ・ジャパン代表・吉村和就氏は「ニセコ町からすれば、正式に売買契約したと言っている。水掛け論になっているが、地裁で敗訴したので背水の陣になっている。ただ本来ならA社はB社を訴えるべき。ちょっと意味がわからない」と述べた。
この法廷闘争によって広く知られたのが、土地を所有することが地下の水源も所有することになるという点だ。吉村氏は「民法207条には、土地を買うとその権利は上と下、両方に及ぶと書いてある。上は山林があれば私のもの、下に地下水があれば私のもの。あまりにも私的な権利が強すぎる。ところが他の国を見ると水資源はイタリア、ドイツ、フランスなどでは全部、国に帰属する。公共的な用途があれば優先して使われ、私の権利は全部排除されるが、日本にはそういった法律がない。そうすると、その土地に例えば水利権があったら、それを高く売ろうという人も出てくる」と、日本と海外の違いも踏まえて説明した。
企業による乱開発などから水資源を守る動きは、国内各地で出始めてはいるものの法整備にはいたらず、条例止まりというのが現状だ。「2012年から全国で約20の都道府県が水源地の保全条例を作った。ただ条例は法律より下のもので強制力がない。罰金でも埼玉の50万円が最高で、それならば50万円を払ってでも乱開発をした方が安いと考える。全く抑止力になっていない。水循環基本法というものも出来上がったが、まだ基本法なだけに詳細な罰則もなく、これも抑止力になっていない」とした。
ニセコ町・羊蹄山付近の水源地に開発が入るとどんなことが起きるのか。「羊蹄山は積雪や雨水を水処理する上では最高のフィルターになっている。そこから出てくるのは全てミネラルウォーターで、富士山と同じだ。それによってニセコ地方が全て潤っている。そこが大開発されると、そこにペンションができたり道路が舗装される。また線状降水帯ができてドンと雨が降った場合には全部土砂が流れて、水源地がダメになる」と、影響は甚大だという。
■外国人でも日本の森林・水資源が買える現実
