■「大手のサイトでも…」 ダークパターンを行う企業の事例

 「ダークパターン」被害に関する調査で、30%の人が過去1年間で意図しない契約・購入などで金銭的被害を受けたと回答した。1人当たりの年間被害額は平均3万3670円~5万3361円で、推定被害総額は年間約1兆575億円~約1兆6760億円にも上る(「Webの同意を考えようプロジェクト」調べ、2024年調査で対象は国内の20歳以上のネット利用者500人)。

OECDが示す「ダークパターン」の類型
拡大する

 2024年に発足した一般社団法人「ダークパターン対策協会」の石村卓也事務局長は、「解約しづらいパターンや、知らないうちに定期購入になっているパターン、『残りわずか』『何人の人が見ている』といったパターンが横行している。事実であれば有益な場合もあるが、複数を組み合わせて、消費者を焦らせて購入させる例が多い。冷静であれば考えられるのに、勢いでクリックするように誘導するのが、ダークパターンの典型例だ」と説明する。

 山田さん(仮名・50代)は今年7月、欲しかった工具セットをサイトで発見した。3万6000円程度の商品が9600円で販売され、「残り5点」となっていたため購入を決意。翌日コンビニで支払うも、商品は届かなかった。その後、メールで問い合わせるも返信はなく、サイト自体が抹消した(購入手続きのメールには実在する無関係の会社名)。ITサポートの会社を営み、普段から気をつけているが、初めて被害に遭った。

 石村氏はこのケースを「金融犯罪の1つでもあるネットショッピング詐欺」だと判断する。「詐欺の入口として、ダークパターンが使われている。『在庫残りわずか』や、あり得ないようなディスカウント率もダークパターンの特徴だ」。

 ダークパターンを行う企業の例としては、企業側が「他もやっているから」と業者に依頼するケースや、業者側が「こっちのほうが儲かるから」と提案するケースがある。「この動画限定!」と謳うスマホ向けの広告動画も考えられ、“正直者がバカを見る”状態になっているという。

 石村氏は、大手サイトでも注意が必要だと警鐘を鳴らす。「詐欺事案はなくても、多かれ少なかれダークパターンが使われている。『お客様満足度No.1』『何冠達成』なども、都合のいいアンケートの採り方により、ウソの場合がある」「企業の担当者が、短期的な売上を追求するあまりそうしたデザイン手法を取り込む。特に中小企業では、外注先から“間違った勝ちパターン”を勧められ、採用してしまうこともある。企業側も気付かないうちに加害者になっている状況がある」。

 一方、マーケティングの一環ではないかとの指摘には、「デザインの創意工夫にブレーキをかけてしまうため、バランスを取るのが非常に難しい。しかし消費者の観点からは、心理的なプレッシャーを感じさせるものは線引きされるべきだ」との考えを示した。

■日本は規制で出遅れ? “騙されない”ためには
この記事の写真をみる(3枚)