■SNSに代表される短文テキストが影響?“言語化”のトレーニング方法は
言語化がうまくできない理由として指摘されているのが、SNSに代表される短文テキストによるコミュニケーションの普及。短い文字でやりとりすることに慣れ、いざ話す場面になると感情をうまく表現できない人が増えていると、専門家も話す。
健康社会学者の河合薫氏は、「コミュニケーションは双方向。“言葉のキャッチボール”とよく言うが、悩むのはボールを投げる側だ。言葉の意味を決める主導権は、キャッチする側が持っている。一方が言うだけ言って、受け止める力が欠如していると、なかなかコミュニケーションは成立しない」と説明する。
そして、「人類は対面でつながることで生き残ってきた。言葉だけでなく、嗅覚や視覚など情報はたくさんある。その中でコミュニケーションを取るから、初対面でも話しやすい空気ができる」としつつ、「SNSでは言葉だけのやりとりが増えている。本来ここにあるのは、言葉ではなくモヤモヤやワクワクであり、言葉はそれを載せる“船”だ」と、昨今のコミュニケーションとの違いを示した。
ギャルタレントのあおちゃんぺは、「発信する側には『嫌われたくない』『怒られたくない』気持ちがある。私は自分の気持ちを伝えられないタイプだったが、“嫌われたくない”を手放してから、伝えられるようになった。苦手な人が頑張るより、得意な人が合わせたほうが円滑にいく。あまり責めずに、周りが優しくコミュニケーションを取ってほしい」と考える。
河合氏は、言語化のトレーニングとして、話す内容を「メールの下書き」に書いてみることを挙げる。テキストではなく“実際に送る文章”を想定して、話し言葉を頭の中で考えるトレーニングにする。また、言葉で伝わらない部分は「五感」でフォローし、感情を全て完全に伝え切ろうと思わないことも重要だとする。
「書くことで、客観的に自分の心と向き合える。私はよく『宛名のないメールを書いて』と話す。相手のことを思い浮かべながら、自分の考えを書き出す。自分だけの世界なら、何を書いてもOKだからだ。書くことには、心の浄化作用がある。メールを書き終えると、半数ぐらいは『たいしたことないな』と気付く。書いたメールは保存して、3日後くらいに読み返す。すると、自分が書いたことなのに、違う解釈が浮かぶ。そしてまた保存して、さらに3日後に読んだ時に、『この部分は、あの人に伝えよう』と実践するトレーニングを積む」
学習院大学非常勤講師の塚越健司氏は、「学生を見ていても、コロナ禍で踏み込むのが苦手になった。これは仕方ないことだ」との印象を語る。解決策として、プレゼンテーションの授業では「30人を前に、いきなり話すのは怖いから、最初に『緊張しています』と言え」と教えているとして、「ハードルを下げるのが大事だ。怒られた時に、条件反射で『拙いですが』と言うのもテクニックの1つだ」と提案した。(『ABEMA Prime』より)
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