しかし、9月2日の初公判では、起訴状に被害者として記されていたのは沙也香さんのみで、日七未ちゃんの名前はなかった。「娘は今も頑張って生きてくれているのに、被害者として見なされていない。相手もそこには罪が問われない。違和感があり、納得できなかった」(友太さん)。

 日本の刑法では原則、胎児は母体の一部とされ、生まれてくるまでは人とみなされない。元検事の西山晴基弁護士は、「いまだに刑法では『胎児の段階はお母さんの体の一部』という見方をしていて 独立した『人とは見ていない』。法律が変わっていない現状がある。胎児を人として認めてしまうと人工中絶も殺人罪になってしまう。そのため『人』という定義でくるめることはできないという批判は多くあり、大変悩ましい」と解説する。

 では、一体どの時点で、「人」として認められるのか。西山氏は「過去の裁判例は、解釈で法律を乗り越えていこうとして、お母さんの体の中でケガを負って、生まれてきたときに後遺症が残った場合は、交通事故にあったときは『母体の一部としての人』、生まれた後は『赤ちゃんとしての人』ということで、刑事責任を問う方向性で解釈をしている」と説明した。つまり事件・事故と胎児の後遺症との因果関係が証明された場合には、胎児は人として認められ、責任を問うことができる方向になっているという。

被害があった側が動かねば何も動かない不条理…
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