■話題となったディベート
山岸氏は、「一番話題になったのは、カーク氏とエリート大学生25人の対話だ。そこで1人の女性が『I’m speaking.』と3回言った。なぜかと言うと、カーク氏がいいタイミングで茶々を入れて、意識的か無意識的か、イラつかせてしまう」といったエピソードを明かす。
その上で、「生産的な対話には2種類あり、1つは『互いの真理が完全でないとわかっていながらも、共通の理解が得られるからと、寄り添っていく対話』。もう1つは『わざとディベート的に、イエスとノーに別れて真理を考える対話』だ。だとすれば、カーク氏の場合は“対話”とは言えない」との考えを示す。
パブリックテクノロジーズ取締役CTOのTehu氏は、「カーク氏は間違いなく意図的にやっていた」とみている。「『私の間違いを証明しろ』と書き、マイクの前に出てこいと言った姿勢だった。学生は息巻いて出てくるが、そこでちゃちゃを入れると、当然ながら調子を崩す。そこをうまくいなす。格闘技や柔道のように論理的にやっていて、すごく頭がいい人だと思っていた。マーケティングとしてやっていることが明確で、いいも悪いもない」。
岸谷氏は「現代において言論は危険だ。トランプ氏もカーク氏も撃たれた。好き勝手にものを言っているところはあり、それは亡くなっても帳消しにはならない。『黒人は奴隷だったときの方が良かった』と言うのは許されないはずだが、そのように言っているとこうなるという現実がある」と指摘する。
こうした事例から、「好き勝手に言うのは、いつの時代も危ないが、そこにともなうリスクが大きくなっている」のだと考える。「カーク氏は銃規制に反対で、それがアイロニカル(皮肉的)だとも言われている。『銃規制するな』と言ったカーク氏が、銃で殺されてしまい、『ほら見たことか』と言われる。現代のカオスが詰まっている事象だ」。
■「(アメリカは)首の皮一枚のところをずっと走っているような国」
