■死刑囚が絞首刑を「違憲」と提訴
約3年前に始まった裁判は、確定死刑囚3人が原告。絞首刑が、憲法が禁じている残虐な刑罰に相当するとして、執行の差し止めを求めている。理由としては「縄の跡など受刑者の身体が損壊する恐れがある」「死亡までに時間がかかり苦痛が続く」などがあり、生命の剥奪だけが刑罰の目的である以上、無用な苦痛を与える絞首刑は改めるべきだと主張しており、確定した死刑判決そのものについて覆そうとしているわけではないとしている。
代理人を務める弁護士・水谷恭史氏は「個人的にはどのような刑罰による死であっても、残虐性を完全に否定できない」としつつ、今回の裁判は「死刑の存廃そのものを直接訴えるのではなく、絞首刑が国が堂々と胸を張って正当な刑罰の執行であると言えるかを具体的な事実に基づいて検証したいというもの」と述べた。
3人の死刑囚に関する詳細は明かされておらず、水谷氏によると「1つは具体的にどの事件のどの人となると、絞首刑の残虐性ではなく、その人が起こした事件の残虐性との比較になってしまい、求める議論と異なる方向に移ってしまうリスクがある。もう1つは原告の皆さん、あるいはそのご親族の皆さんに対する世間からの強い非難、批判というものを懸念した」と、2点の理由があるとした。
死刑囚であるだけに、残虐性においては絞首刑と同等かそれ以上のことを犯した可能性も否定できないところだが、水谷氏は「残虐な行為で被害者の方を殺害したこと自体は、強く非難されるべき。被害者の方あるいは被害者のご遺族の方が、できれば同じ目に遭わせたい、報復をしたいというお気持ちを抱くことも自然なこと。ただし、残虐な行為をした人間には、残虐な刑罰を科してもいいというのは、近代の刑事司法の根幹を揺るがす」と語った。
また日本における唯一の死刑執行法が絞首刑であり、それを違憲であると訴えることは、死刑執行そのものを止め、延命につながるという指摘に対しては、「我々は代わりにこういう方法で執行すべきという主張はしていない。もし絞首刑が残虐だという判断になったとして、違う執行方法が改めて検討されるということであれば、それはそれ」と述べた。
■絞首刑の残虐性「科学的根拠がない」という弁護士も
