■絞首刑の残虐性「科学的根拠がない」という弁護士も
絞首刑、さらには死刑そのものの残虐性を指摘する水谷氏に対して、死刑制度を指示する弁護士・高橋正人氏は、真正面から反論した。「一言で言えば、死刑囚が死刑の執行方法を選択すればいいし、そのように法律を改正すればいい。アメリカなら電気イス、フランスならギロチンのように、本人に選択させる法律に改正すれば解決する問題だ」。
絞首刑の残虐性についても、科学的根拠に乏しいとして否定する。「(絞首刑は)一瞬のうちに頚椎が折れ、一瞬で亡くなる。数秒間は意識があるとかないとか、そういった議論も知ってはいるが、果たして医学的に立証されているのか。また実際に死んでしまうわけだから、立証も実験も不可能だ。科学的な検証の数値・結果が出ていないにもかかわらず、意識があるからどうこうと議論しても、それは空論だと思う」。
また高橋氏は、被害者遺族にとっての死刑執行の意味合いを、実例に沿って説明する。「死刑が残虐かどうかよく議論されるが、殺人事件のご遺族の気持ちはどうか。名古屋で娘を惨殺された事件があり、3人のうち2人に死刑判決が出た。遺族は毎朝、その2人の顔が出てくると言っていたが、そのうち1人に死刑が執行されたら、翌朝からその人だけ顔が出てこなくなったと言っていた。事件に一つの区切りをつけて、前を向くことができたというわけだ。つまり死刑執行の方法が残虐かどうかではなく、死刑を執行して、とにかくこの世の中にいなくなってほしいというのが遺族の気持ちだ」。
その上で死刑囚による提訴の問題点をついた。「死刑の方式が残虐だというのであれば、残虐でない方法を考えればいいだけのこと。今回の訴訟の立証責任は原告側にある。(絞首刑が)残虐だというなら(何が)残虐でないことを言わなければ議論にもならない。非常に無責任な訴訟のやり方だ」と強く指摘した。
■夏野剛氏「死刑存続の議論とやり方の問題はあまりリンクしない」
