■心神喪失とは?
刑法第39条では「心神喪失者の行為は罰しない」「心神耗弱者の行為はその刑を減軽する」と定められている。“心神喪失”は行為の良し悪しや判断が全くできない状態を、“心神耗弱”は行為の良し悪しや判断が著しくつきにくい状態を指す。
北海道大学病院附属司法精神医療センターの賀古勇輝センター長は、これまで30件以上の精神鑑定を行ってきた。「刑法第39条は、日本だけの特殊な法律ではなく、先進国ではおおむね共通している。『本人に責任を問えないような状態であれば、処罰しても仕方ない』という“責任能力主義”の考え方がベースになっている」。
北広島の事件では、判決直後の反応に「被告自身も責任を感じているのでは」といった指摘が出ている。これには「心神喪失の人でも、ずっと続くわけではない。心神喪失には、必ず『精神障害により』の枕ことばが付くが、病状が悪いときに、一時的にそういった状態になる。今回の判決が出たケースも、事件は3年近く前のことで、いま現在は心神喪失ではないのだろう」との見解を示す。
「心神喪失だからと言って、無罪はあり得ない」といった声に対しては、「心神喪失状態を、一般の人が目にすることはそうそうない。定義としては『物事の是非や善悪が全く判断できなくなる』『判断に従って自分をコントロールする能力が失われている』といった状態が、“心神喪失”となるが、言葉ではイメージがつきにくい。われわれの説明不足もあるが、なかなか一般に理解してもらうのは難しい」と語る。
■「精神障害があるから、無罪や減刑されるわけではない」
