■きょうだい格差の背景にある“ブラザーペナルティ”とは

 拓殖大学政経学部教授の佐藤一磨氏は、きょうだい格差の背景には“ブラザーペナルティ”があると指摘する。これは、“男性は仕事、女性は家事”などの「性別役割分業意識」が根強く、学業・職業選択などで女性が負の影響を受けた結果、本人に「○○らしく」という潜在意識が生まれてしまうこと。

 また、“男児選好”という、跡継ぎや労働力として親が「男子」を望む傾向も存在。ブラザーペナルティよりも強制的な思考が強く、親や親戚からの圧力も強いということだ。

“弟がいる長女”は“妹がいる長女”よりも…
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 ブラザーペナルティ発生のメカニズムとして、2つの要因をあげる。1つ目は「親の行動パターンの変化」で、「長女と弟」「長女と妹」では親の行動パターンが変化。親は同じ性別の子どもと一緒の時間を共有しやすいという傾向から、より伝統的な性別役割分業意識を持つようになるという。2つ目が「身近に異性がいることによる子どもの行動パターンの変化」で、異性の兄弟姉妹がいる場合、自分の性別に沿った行動や態度をとることで個性を獲得していきやすい。

 さらに、第1子目の男子の場合、教育年数が延びる傾向があり、年収が約4.4%高くなるという、“長男プレミアム”も存在する。日本では長男ほど学歴や年収が高くなるそうだが、性別に関係なく長子として厳しく育てられたことがプラスに働く傾向もあるという。

 佐藤氏は「そうした考え方は一定数残っている。性別や生まれる順番は選べないが、それが子どもの人生に影響しているのでは。ヨーロッパでは、第1子の学歴が高くなるほか、子どもの世代にもその影響が出るという研究もある。結局、最初の子どもは親もわからないままお金も時間もつぎ込む。親子で行動パターンが似る影響から、子の世代にも脈々と続いていく」との見方を示した。

 コラムニストの小原ブラス氏は、「女性は女子に、男性は男子に厳しく、『自分が子どもの頃はこうだった』となる。例えば、男性もちゃんと子育てに参加すれば改善するのだろうか」と対策を投げかける。

 これに佐藤氏は「素晴らしい指摘だ。結局のところ、親の性別役割分業意識が影響するので、親世代が考え方を変えていく必要がある。休日に食事を作るときも、作るのが母か父かで子どもに与える影響は変わる。『母が作るのが当たり前だ』と子どもが感じてしまったら、大人になったときに繰り返してしまう。そうならないように、普段から『男女の役割の差はない』と教えることが重要ではないか」と答えた。(『ABEMA Prime』より)

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