■なぜ罰則なし? あっても「払えばいいんだ」となりかねない?

 条例を含めた地方自治法に詳しい横浜国立大学教授の板垣勝彦氏は、罰則規定が設けられなかった理由について説明する。盗撮や性的な撮影については、「性的姿態撮影等処罰罪(撮影罪)」「児童虐待防止法」など、国の法律で禁止・罰則があり、条例で入れる必要がないこと。アスリートは、人前で競技をするという“見られること”が前提であり、良い撮影と悪い撮影の区別が難しいことをあげる。

「条例」とは
拡大する

 板垣氏は「自治体側も、罰則をもってまで決まりを守ってもらおうとは考えていないだろう」と指摘する一方、“アナウンス効果”は大きいと説明。「実際にアスリートの盗撮をむやみにやってはいけないと、行政が当該政策課題に本気で取り組んでいるという意気込みを示す目的はあると思う」とした。

 元明石市長で現参院議員の泉房穂氏は、理念条例でも意味があるという考えを示しつつ、今回の三重県の事例は「もう一歩踏み込む余地はあった」との見方を示す。「明石市長時代に、水上バイクの危険行為を受けて罰則を作った。国・検察庁と相談しながら進めたので、今回の件も国の法律との整合性をとっての罰則化は可能だったと思う。最初は努力義務だけで、後から改正して罰則をつける段階的なやり方もある」。

 一方、作家で株式会社カルペ・ディエム代表の西岡壱誠氏は、罰則を設けることの弊害を指摘。「『なんでダメなんだ』と言われた時に、『条例違反だから』と言い返せるのは1つある。例えばアスリート盗撮が3万円罰金だとして、“払ったらいいのか”“じゃあ払うよ”という事例が出てきかねないのが、行動経済学の話でもある。逆に罰則なしで良かったのではないか」と自身の考えを述べた。

 これに対し、ギャルタレントのあおちゃんぺは罰則の金額が左右するとし、「有名アイドルの撮影会だと、3〜5万円という金額で個別撮影ができる。そういうのも見て、“この値段だったら絶対払えない”という罰則じゃないと意味がないと思う」とコメントした。

■国が法律化する“観測気球”としての役割も?
この記事の写真をみる(3枚)