悟さんは何度も片付けようとしたが進まなかった。「片付けないといけないと思っても、ここに来て30分いても何一つ、奈美子の手帳とかいろいろなもので、こういうことやっていたんだなと思うと、全然片付けられなくて。読んだだけで……」。
部屋には予定が書き込まれたカレンダーも残されている。事件が起きた11月13日以降の予定は実現されることはなかった。
部屋には血痕が残っていたが、すべて妻の血痕だと思っていた。しかし事件から3年後、事件の専門家から犯人の可能性を指摘された。
「(警察は)『例え、旦那さんとはいえ、犯人しか知り得ない情報だから言えません。ごめんなさい』みたいな。もっと知らないことがあるかもしれない」(悟さん)
自分の知らない証拠がまだこの部屋に残っているのではないかと考え、保存の目標が決まった。この部屋を残すことで事件の風化を防ぐこと。そして犯人が捕まったとき、この部屋で現場検証することだ。支払った家賃は26年であわせて2,200万円を超えていた。
自宅には動かぬ証拠が残されていた
