この取材の2カ月後、その願いが叶うことになるとは思いもよらなかった。それだけ現場に残された容疑者特定につながる証拠や不審者の目撃情報は極端に少なかったためだ。
容疑者の似顔絵もごくわずかの目撃情報を頼りに描かれたものだった。しかも似顔絵が公開されたのは2015年のこと。事件発生から16年が経過し、『これで探してください』というのは、呼びかける側も頼まれる側も厳しいことはわかっていた。ただ、これしか情報がなかった。
それでも自宅には動かぬ証拠が残されていた。秋山氏は事件から26年目の現場検証を行った。玄関先には、警察関係者や救急隊員とは異なる足跡があった。サイズは24センチ、シューズは韓国製で女性用と判明した。そして血痕は、妻・奈美子さんとは違うB型だった。
「ここでしばらく立っていたらボトボト落ちた。血餅といって、ここで血がたまっている状態だった」(秋山氏)
DNAは重要な証拠だが、データベースに登録がなければ容疑者の特定には至らない。当時のDNA鑑定による捜査は今ほど確立されておらず、事件が長期化したという指摘もある。
洗面所には犯人が手を洗った跡が…
