■就職活動を始めるも「書類が一切通らない」 “逮捕歴”は伝えるべき?

 キリオさんは一日も早く働こうと就職活動を始めたが、一度でも罪を犯した人間への風当たりは強かった。「書類が一切通らない。使っていた転職サイトからも『こういうご事情の方はご利用頂けないので』と、突然アカウントが消えてしまった」という。

懲戒解雇(免職)とは
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 同じメディア系などに履歴書を送るも一切通らなかったため、逮捕歴・懲戒解雇歴を書かずに面接で伝えるスタイルに変更。 36社目にしてWEBマーケティング系の企業に正社員として再就職した。年収は30%以上も減少。逮捕歴は社長や一部の上長にだけ伝えた。

 ベリーベスト法律事務所の松井剛弁護士によると、「有罪判決を受けたら履歴書に『賞罰』として記載する必要がある。事実を伏せると“嘘をついた”とみなされ、のちに『経歴詐称』で解雇される可能性もある」という。一方で、そもそも「賞罰欄」がなく尋ねられてもいない、示談が成立するなどし不起訴になった、執行猶予期間が終了した、拘禁刑以上の刑の執行から10年経過した、罰金刑以下の刑の執行から5年経過したなどの場合、「記載する必要は一般的にないと考えられる場合もある」との見方を示した。

 キリオさんは、経緯を明かさざるを得ない事情もあったと説明する。「誰もが知っているような会社に勤めていて、逮捕された時点で報道される身だった。転職も、大きくキャリアダウンするような所しか受けていなかったので、“なんでこの会社に?”という違和感は隠しようがないと思った」。

 面接で逮捕歴を伝えると、多くの面接官が真摯に向き合ってくれ、ネガティブなことを言われることもなかったそうだ。しかし、現場と会社では見解が異なったという。「面接官が一緒に働きたいと思ってくれても、『会社としてNGでした』『議論したけれども株主がイエスと言わなかった』『上場を目指しているので難しい』となってしまう」と明かした。

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