■親子でひきこもりを経験した母

朝美さん
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 朝美さん(64)は、“親子ダブルひきこもり”の当事者だ。先にひきこもり状態になったのは長男で、「息子はアルバイトを続けていたが、25歳で仕事を辞めて、そのまま外に出なくなった」という。「30歳過ぎると仕事なくなる」「世の中になじめなくなる」などと言うたびに、「嫌な顔をして、だんだん近づかなくなった」のだそうだ。

 親子のすれ違いにより、母親自身にも異変が現れた。「家庭や職場の状況などが重なり、どんどんおかしくなってしまった。世の中全体が怖くなり、結局親子どちらもほとんど外に出られない、ひきこもり生活を3年ぐらいした。世界中から責められている錯覚を起こしていた」。

 かつての性格と比べて、「『みんなで楽しくやりましょう』といった感じだったので、世の中が怖くなるなんて、想像もつかなかった」と語る。そんな生活が3年続いたが、朝美さん自身は、入院した友人のお見舞いをきっかけに、再び外出できるようになり、現在は引きこもり状況を脱出している。

 親子ひきこもり生活を振り返り、「ひきこもって良かった。ひきこもったことが人生の転換期になった」と話す。「自分がひきこもったことで、息子のつらさを理解できた。私は厳しい母に育てられたため、母親に甘えられず、『人に嫌われないように』『見捨てられないように』と、周りの顔色ばかりを気にして生きてきた」。

 しかし、「ひきこもった経験を通して、家族会や居場所の人々とつながり、人の優しさや思いやりの本質に触れられた気がする。それが自分の生きる意欲につながり、『いまが人生で一番楽しい』と生きやすくなった」と明かす。

■ひきこもりの経緯
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