日本と圧倒的に違う“つらさ”への向き合い方…医学部准教授が解説

海外で処方される「つわり薬」
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 海外では気軽に手に入る「つわり薬」は日本では保険適用外で、「7錠で2万1780円」などまだまだ高額だ。ハーバード大学の医学部准教授で3児の母・内田舞氏は、アメリカの状況について以下のように語る。

「吐き気が苦しいと産科の先生に電話をしただけで、その日のうちに薬局にオーダーを出してもらい、私の場合は保険で全部カバーされた。アメリカの医療制度の問題はたくさんあるが、私が住んでいるマサチューセッツ州はアメリカで唯一、州民皆保険がありマサチューセッツ州に住んでいる人は皆、保険でカバーされるシステムがある。少なくとも私自身が(つわり薬に)高額を払ったことは一度もない」(内田舞氏、以下同)

 ではなぜ日本と海外とで違いがあるのだろうか。内田氏は以下のように解説する。

「カルチャー(の違い)が一番大きいと思う。つわりに始まったことではなく、生理痛も痛みやその他の苦しみを軽減できるような薬もあり、思春期から頻繁に小児科の先生たちが対応しているなと思う。学校に行けなくなるとか会社に行けなくなるとか、危機的な症状を待つ必要はなく、『今こういう症状を感じていてつらいから』という理由だけで、薬にアクセスできている感じがする。また妊娠の一番終わりの痛などに関しても、アメリカではある程度、陣痛が進み子宮口が開大してから麻酔を入れることが一般的。完全に無痛分娩ではないが、鎮痛剤を使った分娩が一般的だ。そのプロセスを女性1人がナビゲートするのではなく、パートナーや家族全体がその会話に参加している姿を頻繁に目にする。つわりだけではなく女性の生殖に関する医療が、もう少しアクセスしやすいし社会の中での会話がもう少しカジュアルにされているのではないかと印象を受ける」

 海外で使われている薬が日本では承認されないことや、承認されても時間がかかることについては、以下のように見解を示す。

「一番有名なのは、経口避妊薬であるピルの承認がアメリカと比べて40年の差があったということだ。(日本で)承認された1999年、同じ年に承認された薬がバイアグラで、バイアグラの承認に必要だった期間は6カ月であった。この差はやはり性差や承認に関わる人が誰なのか、データを審査しているのが誰なのかも関わってくるのではないかと思う。女性の健康がここからもう少しスピードアップして改善されてほしいというのが強い願いだ」

なぜ進まない?医療が発達した現代も解決しない“女性特有の苦しみ”
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