断水の影響は島の主要産業にも大きな被害をもたらした。6年前に移住してきた、レモン農家「kimi レモン」の吉田公新さん。一般のレモンの倍以上の大きな実をつける八丈島のブランドレモン「八丈フルーツレモン」は皮ごと食べられ、驚くほどみずみずしくほんのり甘い。ハウス栽培で丁寧に育てあげたレモンは、1玉2500円以上の値をつけることもある。

 「ここのハウスだけで(水を)1週間で20トン使う。水の出るところから往復して、実際に使用する量の3分の1とか4分の1ぐらいの量で、だましだまし繋いできた。今年は贈答用は取りやめ」と語る吉田さん。現在ハウスと水は復旧したが「見習いでずっと1年間来ていた方が、将来希望が持てないという感じで離島して……。収入がない状態で出費が続いているので、ちょっときついところはある」と、リアルな実情を明かした。

 「藍ヶ江水産 干物食堂」の高山広海店長は「いやーきつかったですね。漁協の機械が断水だったので、氷が作れない。保管するところもないので。一次産業が止まっちゃうと、何も回ってこない」と振り返る。

 漁協の断水と冷凍設備の故障で、漁は1か月停止。ようやくカツオや地金目鯛がメニューに。高山さんは「完全復興というわけにはいかないが、徐々に元気を取り戻してくるみたいな。そういう感じは嬉しい」と語った。

 観光客に人気の「ゆーゆー牧場」も深刻な被害に見舞われた。島で唯一残る酪農事業者、リードホテル&リゾートの歌川真哉代表は「上のほうにある子牛のいるエリアの小屋が全部風で飛んでしまったので、ひとまず仮で単管とトタン屋根をつけて復旧してありますけど、これを直さなきゃいけない」と嘆く。

 さらに断水の影響で搾乳した牛乳を殺菌できず、大量に廃棄せざるを得なかったという。牧場とホテルを経営する歌川代表。現在営業は再開したが「お客が完全に戻ってくるのはたぶん、来年の夏ぐらいだと思うので、それまでに1億5000万円ぐらい売り上げが落ちる」と語った。

資金繰りに苦しみ休業、廃業を余儀なくされた人も
この記事の写真をみる(4枚)