名古屋主婦殺害事件の安福久美子容疑者(69)は、逮捕直後には供述していたが、一転して黙秘となり、その姿勢を続けている。黙秘は憲法で保障された権利であるが、殺人事件で重視される動機の解明に向けては、大きな障壁となる。
元大阪地検検事の亀井正貴弁護士は、黙秘し始めた理由を「弁護人のアドバイスではないか」と推測する。「日弁連(日本弁護士連合会)では、黙秘権を行使することを前提とするマニュアルめいた指導が行われている。そのため若い人は黙秘を勧める傾向がある。黙秘は否認の場合と犯行を認めている事件では重みが違う。否認している事件では黙秘権を行使することは原則としてあって良い。認めている事件ではそれがプラスマイナスということなので、慎重に見極めながら、黙秘する事項、タイミングを考えながら弁護人はアドバイスしていくのだろう」。
報道の大きさによって、黙秘に転じるケースがあるとする識者もいる。これには「報道の大きさというよりも、『自分の言ったことが外に漏れて、報道されている』ことが頭に来て、黙秘する人はいるが、おそらく確率的には黙秘はほとんど弁護人のアドバイスだ」との見方を示す。
ポイントは「責任能力は大丈夫か」という点
