犯行に使われた凶器も、今なお見つかっていない。「凶器の有無は原則として大きいが、自分の感覚では『頸部(けいぶ)に何センチ入ったか』といった外形的事実だけで、客観的行為として殺意は立証できるだろう。もちろん凶器や犯行動機も重要だが、罪体の立証はできる」。
黙秘権が存在する一方で、被害者側の“知る権利”については「昔は、被害者は証拠としての位置づけしかなかった。その後、被害者参加制度ができて、事件記録を知る権利を得た。知りたい気持ちは当然あるだろう」。
その上で、「もし私がこの事件の弁護人だった場合、動機を推認しにくい。おそらく被害者に過失はない。夫になんらかの原因があるとした場合には乖離(かいり)がある。あまり早めに動機をうたってしまうと、被害者を刺激する可能性がある」と語る。
「弁護人は基本的に、被告人・被疑者に有利な量刑を得る目的がある。おそらく被疑者は、弁護人には事実を語っているだろう。それがあからさまに出た場合にどうなるか。今後、責任能力が争点になる可能性もあり、その前提は被疑者の供述や問診結果の内容だ。そこも踏まえて、どういう話をしていくのか、様子を見ながらということで、黙秘を勧めたのではないかと推測している」
今後起訴され、公判となった場合には、裁判員裁判になると予測する。「求刑は15〜20年程度だろう。(26年間にわたり隠れていた点は)求刑の数字を変えるほどの影響はないだろう。逃げたということ自体は処罰できない。心証としては(影響が)あると思う。というのも被害者遺族の処罰感情は非常に厳しいだろう。リスクがありながら、社会に公表してきた。26年間の重みは、量刑上の影響があるだろうが、数字に反映されるかと言われるとどうかなと。裁判官や裁判員の心証には量刑を重くするために来るものがあると思う」。
今後も黙秘を続ける可能性
