■ヤヱさん「子どもを選ぶか世間体を選ぶか…」

 南氏の母・ヤヱさんは、息子からカミングアウトされるも、当初は拒絶。受け入れるまでに10年かかった。当初の思いについて、「性的嗜好で不純なこと、世間では認められてないことやと。一時的なものだと本当に思っていた」と語る。

 「ゲイ」という言葉は知っていたものの、「悪いことをしている」「不謹慎」という感覚に加え、「育て方を間違った」と悩んだ。また、カミングアウトされた後も、数年間は世間体が気になり受け入れられなかった。

「子どもを選ぶか世間体を選ぶか、“やっぱり子どもを選ばな”っていう。8割わかっているけど、かっこ悪いとか、みんなから受け入れられへん、否定的に言われるやろうと思った。親友と姉たちに言って、心にあった“鉄の塊”は少し軽くなった。でも、それから公然と言えるようになるのにまた時間はかかった」

 南氏の結婚式でヤヱさんがスーツを着たのも実話だ。「吉田くん(南氏のパートナーの吉田昌史弁護士)もご両親が亡くなっているし、私の主人も亡くなっていたので、格好つかないから私が行かなと。そこで最後の2割が落ちたというか、結婚式やってくれてよかったなと今は思う」と振り返る。祝福してくれる人の多さを目の当たりにし、「認識が間違っていた」と気づいたということだ。

南和行弁護士
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 南氏は、大学4年生時にカミングアウトした際の状況を振り返る。「父と祖父の法事の帰り、南海電車の中で、家に着く前に兄と母にカミングアウトした。びっくりするだろうけど、“やっぱり家族だから言っておきたい”と。母はお芝居みたいに泣き崩れるし、兄には『何でそんなこと言うんだ』と激怒された。その後、母と近くに住みながら、一緒にご飯を食べて自分の家に帰ると、『やっぱり同性愛はおかしいと思う』と語る母からの留守電が入っていた」。

 舞台で描いたのは、カミングアウト“された側”の葛藤だ。「僕と母はこうして仲良く喋っているし、ギクシャクもしてないけど、全部わかり合っているとも思わない。カミングアウトはこちらの気持ちでするけれども、全否定されて、“お前がカミングアウトしたから悪いんだ”という言われ方をすることのショックもある。そういったことを考えてもらえるきっかけになれば」と複雑な心境を明かした。

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