トランプ政権が世界最大の援助機関「USAID」を解体。支援を必要とする人々はどうなるのか? 「アメリカ不在の援助」の行方について、朝日新聞編集委員 奥寺淳氏に聞いた。
ハワイとオーストラリアの間にあり、海面上昇のリスクから人々が命の危機にさらされている国、ツバル。そんなツバルもUSAID解体の影響を受けているという。
ツバルってどんな国?
その理由を奥寺氏は「ツバルはアメリカをはじめオーストラリアやニュージーランドからの支援を受けて埋め立て事業を進めていた。だが、今年1月のトランプ大統領再任以降、方針がガラッと変わり、USAIDを通じての支援が打ち切られた」と説明。
奥寺氏はアメリカの支援がストップした影響を取材するため、ツバルへ向かった。
世界で4番目に小さな国、ツバル。美しい海や砂浜、豊かな自然が残っている国で、およそ1万1000人が暮らしている。しかし、山も丘もなく真っ平らな地形。最も高い建物は3階建ての政府庁舎。2050年には国土の50%が頻繁に水に浸かると言われ、「沈みゆく国」とも呼ばれている。
ツバルの住民A「ツバルは気候変動に最も脆弱な国の一つ。低いサンゴ礁の島で非常に危険だ。いつかツバルは永遠に失われてしまうかもしれない」
そんな中、進められているのが国連開発計画(UNDP)による埋立事業。およそ800メートルの新しい土地には国会議事堂や政府施設が整備される予定で、アメリカのバイデン政権時にUSAIDを通じ265万ドル(約4億円)を支援していたが状況は一変した。
国の存続が危ぶまれる中、国際情勢に翻弄されるツバル。住民たちは故郷で生きるか、移住するか選択が迫られている。
ツバルの住民B「子どもが一人いて、より良い教育と未来を求めて移住を決めた。生活の安定を求めて移住を選ぶ人も増えている」
ツバルの住民A「ツバルは世界で一番平和でフレンドリーで文化や人々が大好きだ。ツバルを離れたくない」
ツバルを取材して気付いたこととして奥寺氏は「プロペラ機でツバルに着いた時、本当に真っ平らで、東日本大震災の時の映像がフラッシュバックした。もし南太平洋で地震や大規模な火山噴火が起きて津波が来たら逃げるところがないと気づき、背筋が冷たくなった」と明かし、「科学者たちの予測では、2050年までに何も対策を取らなければ、高潮の時に首都フナフティは50%が水に浸かるという。だがトランプ大統領は『気候変動は詐欺、でっち上げ』と主張するなど大きなギャップがあり、そういった中で援助が停止された」と語った。
奥寺氏によるとアメリカが抜けた穴はオーストラリアが埋める形で事業は動いているというが、安全保障の面でも放置できない問題だという。
「今までアメリカは『赤道の南』にはあまり関与していなかったが、中国が影響力を強めてきた。そこでアメリカも『では本格的に関与するぞ』と動き始めたところですぐにハシゴを外す形になってしまった」


