■山上被告、裁判で明らかになる数々の苦悩
これまでの公判では、被告の母親や妹が出廷し、事件の背景に、母親の旧統一教会への入信や多額の献金、娘への度重なる金の無心などがあったと語られた。
そして、2回目の被告人質問で山上被告は、脳腫瘍を患い視覚障害があった兄について語った。兄は母の献金に強く反対。暴力を振るうこともあったというが、2015年に自殺している。旧統一教会が兄の通夜を強引に教団の形式で行い、それが怒りにつながったという。
2018年と2019年には、来日した旧統一教会の幹部をナイフや火炎瓶で襲撃しようとするが、厳しい警備などを理由に断念。その後、銃を作り始めた。
安倍元総理に矛先が向かうきっかけとなったのが事件前年、旧統一教会関連イベントに、安倍氏がビデオメッセージを寄せているのを見たことだ。「どんどん社会的に認められてしまう」として、「被害を被った側からすると、非常に悔しい。受け入れられない気持ち」だったと、被告は振り返っている。
鈴木エイト氏は、裁判傍聴を通して「統一教会に恨みを向けたのは、かなり後の方だと明らかになった。なぜそれが安倍元総理に向いたのかのヒントも見えてきた。彼自身も自殺未遂を繰り返し、厭世(えんせい)観が見える。兄の死が一番のきっかけだったこともわかった」と語る。
■洗脳された母親も“被害者”
