■山上被告は“テロリスト”なのか?
山上被告は、何度も“未遂”行為をしていた。2006年頃には、来日中の教団幹部をナイフと催涙スプレーで襲撃しようと大阪に向かった。2018年には、さいたまスーパーアリーナでの教団行事を狙うも、会場が大規模だったことから直前でやめた。2019年には愛知県の空港で、来日中の教団幹部をターゲットにし、複数の火炎瓶を準備するも、見つけることができず、海に捨てている。そして事件直前の2022年7月7日、岡山の演説会場で、安倍元総理の銃撃を計画したが、近づけなかった。
鈴木氏は、山上被告を“テロリスト”と表現することに注意を促す。「日本の法律では、テロ行為を『政治的な思想信条を実現するために、社会に不安や恐怖を与える目的・手段』と規定している。現時点でテロだと認定してしまうと、前提となる議論が進まなくなってしまう」。
そして、「『一種のテロだ』と言ってしまうと、そこで思考停止になりかねない。また、テロと認定された瞬間、テロリストの言い分を流してはいけないよねという流れになってしまいかねないので、(テロであることを前提とした議論は)まだ待って欲しい」と求めた。
実は、山上被告の机には、通信制大学の法学部の願書があり、「将来は法曹としてカルト教団被害者の一助となることが目標」と書かれていたという。2010年、当時30歳の頃に用意したものだ。事件を起こさずに、救われる道はなかったのだろうか。
鈴木氏によると、「今回証人として出た神谷慎一弁護士(霊感商法対策弁護士連絡会)は、旧統一教会信者だったが、親の説得で脱会して、その後に弁護士として被害救済に向き合っている」として、「なぜ山上被告もそういう境遇になれなかったのか」と問う。「彼の頭の良さも見えている。もし法曹関係者になっていたら、優秀な弁護士になっていたと思うと、本当に惜しい。優秀な人材を、なぜ犯罪者にしてしまったかを考えないといけない」。
山上被告は、事件を起こすことによって、旧統一教会問題が話題になると想定していたのか。これについて、鈴木氏は「核心部分は出ていないが、報道ベースでは『このような事態になるとは思わなかった』と言っている。被告人質問で重要なのは、元総理の動画を見た時のことについて、絶望に加えて『危機感』と発言した点だ」とした。
事件前、メディアの報道は十分だったのだろうか。法廷で明らかになった山上被告が直面した”宗教虐待”の実態について、問題提起はあったのか。鈴木氏は、「僕は政治家と教団の関係を報じてきたが、それを山上被告は見ていたことが裁判で明らかになった。一方で、他のメディアは僕の報道を追わず、ニッチな話題で終わっていた。被害者に希望を与えられる報道ができていたら、変わっていたのではないか。解散命令や被害者救済法などが出たが、本来であれば事件が起こる前にやるべきだった」とした。
(『ABEMA Prime』より)

