■南海トラフ地震臨時情報時には“経済的自粛”も 必要な“備え”は?
2024年8月、宮崎県で震度5を観測した地震を受けて、初の「南海トラフ地震臨時情報」が発表された。それにより、イベントの開催や鉄道の運行、旅行・外出などをめぐる混乱が発生。今年8月にガイドラインが改訂され、住民へは「逃げられる備えをして日常生活を維持」、イベント・事業は「来場者の安全を確保し実施」、鉄道へは「運休や徐行など運行規制を求めない」とした。安全を確保し“できる限りの活動継続”を求めつつ、最終的な判断は現場に委ねている。
長尾氏は、「この基準を作った時、“2年に1度はこういうことが起きる”と思っていたが、6年間なかった。突然出たことで過剰反応が起き、経済的自粛につながってしまった。白浜の海水浴場等が閉鎖するのは合理的だが、神奈川県の湘南や紀勢本線の運休、新幹線の減速について、それらが十分だったかという検証はない。そのあたりは却って『臨時情報はないほうがいいのでは』との説も出てきた」と説明。
また、備蓄においては、「普段使いの備蓄、ローリングストックといって、レトルト食品なんかを多めに買って常時ストックし、古いものから食べていく。日常生活の中に防災を組み込むというのが今の方向だ」とした。
文筆家・情報キュレーターの佐々木俊尚氏は、「東日本大震災の福島原発事故で散々言われたのは、『正しく恐れろ』。当時も過剰反応が多く、家のドアにガムテープを貼ったりする人もいた。正しく知識をつけて恐れるべきだし、“日常”と“備える”を分離するのは間違いだと思う」との見方を示した。
なお、気象庁は後発地震情報時にとるべき防災対応について、枕元に靴などを置いて寝るなどすぐに逃げ出せる態勢での就寝、非常持出品の常時携帯、ラジオなど緊急情報の取得手段の確保、ブロック塀に近づかないなど身の安全の確保を促している。
■穂川果音「“空振り”でいいと思っている」
