■シェイドゥラエフの厄介な点は「パンチを打つ時に全く“殺気”がない」こと(久保優太)

 最後は初代K-1ウェルター級王座をはじめ、キックボクシングで輝かしい実績を残し、現在はRIZINで活躍する久保優太だ。久保は昨年大晦日にシェイドゥラエフと拳を交え、朝倉とは練習パートナーという間柄でもある。久保はシェイドゥラエフと対峙した時、爆発力や勢いよりも技術のきめ細かさ・殺気のなさを感じたという。

「僕はシェイドゥラエフは荒いイメージがあったんですけど、打撃でも寝技でも動きが精密でしたね。打撃の時は細かいフェイントが上手かったですし、常に自分にとって有利な立ち位置やポジションを取る感じです。寝技になっても押さえ込みのプレッシャーのかけ方が絶妙で、ここを押さえれば相手は立ち上がることが出来ないというポイントを確実にキープしてくるんですよね。その状態からパンチを打ってくるので、すごく理にかなった動きをする選手だと思いました。

 あと僕は相手がパンチを当てたい時とパンチをフェイントにしてタックルに入りたい時、殺気の違いで分かるんですよ。仮にフォームや動きが全く一緒だったとしても、殴ろう・倒そうという気持ちを持っているかどうか分かるものなんですよね。でもシェイドゥラエフの場合はパンチを打つ時に全く殺気がない。それもあって僕は右ストレートをもらってしまいました」

 シェイドゥラエフ・朝倉両者の強さを肌で知る久保はこの一戦をどう見ているのか。久保は朝倉の練習パートナーという立場のもと「朝倉選手は視野が広くて頭が柔軟。しっかり勝つための準備をしている」と語っている。

「朝倉選手とは一緒に練習しているので細かい話は出来ないですけど、すごく自信を持っている感じはしますね。朝倉選手は頭のいい方で、格闘技においても視野が広いんです。格闘家は固定概念や一つのことに固執しちゃう選手が多いと思いますが、朝倉選手は頭が柔軟で、切り替えるところはすぐに切り替えるし、損切するときはパッと損切りする。そういう点は凄いなと思いますね。今回のシェイドゥラエフ戦も何も考えずに試合を受けた感じはしないですし、しっかり勝つための準備を続けている印象を受けます」

 打撃のエキスパートの平本とレスリング出身の武田、バックボーンもファイトスタイルも異なる2人から出たシェイドゥラエフ攻略の鍵は意外にも“組み技”。そして久保は朝倉の格闘技における柔軟な思考について言及した。一か八かの打撃勝負にかけるのではなく、組み技ベースのシェイドゥラエフに対して組み技で勝負する。そこにシェイドゥラエフ攻略のヒントがあり、固定概念に捕らわれない自由な発想が出来る朝倉未来だからこそ、シェイドゥラエフに勝つ可能性を秘めているのかもしれない。

©︎RIZIN FF
取材・文/中村拓己

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