「整形手術をしている可能性もある」

経年変化を推定して見立容疑者の似顔絵
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 警察庁は2024年に経年変化を推定して見立容疑者の似顔絵を公開している。

 山本記者は「ある(警察)幹部は逮捕に至ってないことから、整形手術をしている可能性もあるとしている」と明かした。

ANNが入手した写真とは?

左:見立容疑者 右:関東連合の元メンバー・山口哲哉被告
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 さらに2025年になり、ANNが見立容疑者にまつわる写真を入手した。

 山本記者は「見立容疑者の中学時代の卒業写真だ。左が見立容疑者で右が関東連合の元メンバー・山口哲哉被告だ。山口被告は3月にタイで拘束されて警察に逮捕され、現在公判中だ。山口被告はカンボジアを拠点とする特殊詐欺グループのリーダーだったと見られている。中学時代とはいえ、同じ写真に写っていることなどから、警察はこの2人の繋がりについても詳しく調べている」と説明。

 山口被告は拘束される中、4月にタイでの取材に対し関東連合とのつながりを否定している。

 フィリピン、タイ、カンボジア…。ここまで複数の東南アジアの国々の名前が挙がってきている。2025年は東南アジアを拠点にした犯罪の検挙・摘発が目立った1年だったがこれらにつながりはあるのだろうか?

 ANNバンコク支局長の金井誠一郎記者に見立容疑者の情報が入っているか質問すると「山口被告が捕まった際に、現地当局の間でも『見立容疑者』というワードが出たことは確かだが、具体的な情報は出てきていない。見立容疑者が東南アジアに入国したことは確かだが、東南アジアは多くの国が海に接しており、さらに陸路で他の国に移動できる国も多い。国によっては偽造パスポートを作れたりもする。そのため、入国した国から違法に記録を残さずに別の国に移るとことも難しくない状況だ。日本警察と東南アジアの警察当局は適宜情報交換をしており、今見立容疑者がどこにいるのか、特殊詐欺の関係容疑者などを捕まえた際に見立容疑者との関係を調べるなど今も捜査に注力している」と答えた。

 近年、東南アジアでは特殊詐欺に絡んで日本人やアジア人が摘発されるケースが増えている。

 この点について金井記者は「東南アジアの特殊詐欺はとてつもない状況になっており、様々な組織が存在、他のグループの手口を真似て、いわばフランチャイズ化し、大きな特殊詐欺の団体が出来上がっている。2025年の10月までの特殊詐欺に関する検挙状況では、カンボジアで61人、フィリピンで22人、そしてマレーシアでは7人となっているが、先月、マレーシアのペナンという観光地で14人の日本人が特殊詐欺に絡んだとして拘束されている。さらに、カンボジアでは先月13人、そして2週間前には16人の日本人が特殊詐欺に関与したとして拘束されている」と説明した。

 日本人が絡む特殊詐欺には大きく2つのタイプが存在するという。

 金井記者は「1つは日本人がトップに立ってチームを作った特殊詐欺グループだ。例えばフィリピンやカンボジアなどで、高層マンションやリゾート地などを根城にして、日本人が日本人に対して特殊詐欺を行うグループ。特徴としては、トップが日本人で、日本人の仲間や闇バイトでリクルートした人たちを現地に集めて“かけ子”として日本に対して特殊作業を行う。例えば、闇バイト強盗事件で有名となったルフィグループも元々はこの特殊詐欺を行っていたとされている。山口被告もタイ人が住む富裕層エリアに6部屋近い大きな部屋を持ち特殊詐欺に関わっていたとみられている」と明かした。

 拠点を東南アジアに置くメリットについては「まず、物価が日本より安いので、リゾート地や高級ホテルという快適な居住環境で犯罪行為ができる。さらに、SIMカード、携帯電話の電話番号なども簡単に安く入手できる。さらに摘発の瞬間に多額の賄賂を渡すことによって拘束を逃れたり、当局側と関係を作ることで『来週警察が来る』などの情報を、警察から入手することも行なっているという」と説明した。

 2つ目のタイプは「超巨大特殊詐欺グループ」だという。

「これは日本人が20人とか30人といった規模で日本人に対して行う特殊詐欺グループと違い、各国の犯罪組織・反社会集団・暴力団関係者・マフィア関係者が中間層として集められて、その上に中国のマフィアがいるとされている。中間層の下にはそれぞれの仲間や各国から闇バイトや騙して連れて来られた人、そして誘拐などで集められたグループらを使って各国にかけ子行為をして金を集める。有名なところではKKパークという街全体が詐欺の拠点になっている場所がミャンマーにはある。最新の情報では、中国人7600人が今年ミャンマーから中国に送還されたという情報もある。つまり、7000人以上がミャンマー国内で、主に中国人に対して特殊詐欺を行っていた実態があると考えられるのだ。こうしたグループの特徴は“凶暴性”だ。ノルマを達成できなかったりすると電気ショックなどの拷問が行われる。そうした中で、バイト感覚でかけ子になったものの、きつすぎて逃げ出す際に死亡してしまったり、拷問の中で死亡された方もいるという」

 なぜ都市丸ごと犯罪拠点になってしまうのか?

「例えば、ミャンマーでは治安情勢が非常に不安定だ。ミャンマーには軍と戦っている勢力が各地に存在しており、そうしたエリアは国として統制が取れていない状況だ。そういったところにカジノの建設であったり、中国の犯罪組織が近づいてきて、金が得られる環境を整える代わりに、犯罪場所を地元の方や政府と戦っているようなグループが提供することによって、国としても手がつけづらい犯罪エリアが出来上がっていると考えられる」

 こうした状況については、各国はどのような対策をしているのだろうか?

 金井記者は「各国、この状況をかなり問題視していて、先日、高市総理が参加したASEANでも東南アジアの特殊詐欺、特にミャンマーやカンボジアの特殊詐欺が議題に上がっていた。そして、その他にも警察幹部が各国で集まって今どういった事件や犯罪が世界各国で問題になっているのか、それにどう対処していくのか議論が行われている。そうした状況もあり、例えばカンボジアではかなり大規模な摘発が進み、数百人、数千人がこの1年間でも摘発された。“根絶やし”は難しい状況だが、ミャンマーもカンボジアも、特に特殊詐欺の根城になっているとされる国も、周りの各国から捜査をしっかりするよう圧力をかけられおり、対策は進んできている」と説明した。

 組織犯罪の移り変わりという“文脈”に見立容疑者ものっているはずだ。日本警察は対応出来ているのだろうか?

「数十年前の日本では暴力団が犯罪者の一大組織だったが、そこから“半グレ”という関東連合やドラゴンなどのグループが出てきた。犯罪者側も時代に応じて犯罪行為がしやすい形に流動的になっていると言える。今の特殊詐欺やトクリュウは相手が誰かもわからず、準暴力団関係者も、犯罪行為をする一般人も、様々な人たちが入り乱れて犯罪グループを形成し、その時々に応じて犯罪をする時代になっている。それに対して、警察も例えばトクリュウに対する捜査を専門にするチームを作るなど、互いに時代時代に応じ形を変えてきている。そうした中で、見立容疑者が所属していた関東連合は、様々な犯罪行為の新しい形、暴力団から準暴力団に変わるきっかけを作ったという点ではとても大きな存在だったのではないか」

ABEMA/ニュース企画)
 

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