■入試の国語問題にパレスチナの悲劇を描いた詩
灘中は兵庫県神戸市にある私立男子中高一貫校で、入試は全国でも最高難易度といわれる。2026年は1月17~18日に国語・理科・算数(社会はなし)で行われた。国語ではパレスチナの惨状を表す詩の読解問題を出題し、ムスアブ・アブトーハー氏(パレスチナの詩人)の「おうちってなに?」、ゼイナ・アッザーム氏(米在住のパレスチナ系の詩人)の「おなまえ かいて」が掲載された。
灘中の教頭は「本校の試験科目には社会がない。かといって社会を勉強しなくて良いわけではなく、社会的な問題についても日々ニュースや新聞に目を向けて関心を持って欲しい」「政治信条を問うものではなく、あくまで読解力を問う問題だ」と取材に対して答えた。
イスラム思想研究者の飯山陽氏は、「灘中がこういった問題を出すこと自体は何の問題もない。『こういう学校に通わせたい』という人が、子どもに受けさせればいいだけの話だ。ただ、これは入試であり、教育ではない。授業で意見をぶつけ合うならいいが、テストには正解が求められる。子どもは灘中が定めた“正解”を目指さないといけない」と考えている。
そして、「異なる立場の意見を出すと、不正解になる。立場によって解釈が異なる題材は、入試に不適切だ」と指摘する。「問題の文脈だけを見れば、『ひとりの人間として尊重されたい』が正解になる。しかし、他の立場から考えた場合には、そう言うのが難しいところもある」。
受験総合研究所(じゅそうけん)代表の伊藤滉一郎氏は、「日本最難関の灘中だから、まだ良かった。灘中を受ける子たちは、ある程度、客観的かつ俯瞰的な視点で捉えられるが、偏差値50程度の中学であれば、感情的に読み取る層も増えるのではないか」と語る。
灘中高出身でパブリックテクノロジーズ取締役CTOのTehu氏は、「15年前に試験を受けた人間からすると、こうしてバズるのも良くない。『IQ(知能指数)だけでなくEQ(心の知能指数、感情指数)も問う問題だ』との声も見られるが、むしろEQがあると誤答する」と話す。「国語の試験は『文章から読み取れること』だけを答えるのがルールだ。パレスチナに寄り添う人が絶賛するのも、イスラエル寄りの人が違反するのも、どちらも的を射ていない」。
灘の校風を絡めつつ、「“受験サイボーグ”をあまり高く評価せず、自分が興味あることを小学校で学んだ子を採りたいため、いろいろな科目でそういう要素を出す。今年はそれが国語だったが、別の年は理科で『イカの絵を描きなさい。目がどこにあるか知っているか』と出題してくる。今年はたまたま社会的なテーマでバズってしまい、むしろかわいそうだなと思った」と説明する。
■両国それぞれの立場から問題があるべきだった?
