<大相撲三月場所>◇十一日目◇18日◇大阪・エディオンアリーナ
優勝争いの行方を左右する1敗同士による大一番。行司軍配が返って館内が静まり返った立ち合いの瞬間、あろうことか客席から茶化すような声が響き渡った。この無作法な振る舞いに館内からは失笑が漏れたものの、相撲実況で知られる藤井康生アナは「大一番で残念」など愕然、落胆して苦言を呈した。
波紋を呼んだのは、関脇・霧島(音羽山)と前頭十枚目・豪ノ山(武隈)による注目の取組。“荒れる”春場所の優勝争いでトップを走る両者による、1敗同士の直接対決だった。軍配が返り、行司の木村晃之助が「手をついて」と発声。両力士が拳を下ろし、静寂がエディオンアリーナを包み込んだその時、静寂を切り裂くように「へっくしょん!」という、わざとらしい客の声が響き渡った。
立ち合い直前に残念な振る舞い
緊張感あふれる場面にそぐわない奇声に、館内には一瞬、失笑のような笑いが。しかし、そのまま行われた取組は、正面から激しくぶつかった豪ノ山に対し、霧島が一度受け止めてから左へいなす激しい展開となった。霧島は左の突き押しを繰り出した際、足が流れてバランスを崩す場面もあったが、そこを見逃さなかった豪ノ山が攻め込むところを、霧島が左からの突き落とし。豪ノ山はバタリと前に崩れ、霧島は俵の上でひらりと体をかわして土俵に残った。霧島は1敗を死守して二桁となる10勝目。敗れた豪ノ山は一歩後退の2敗目(9勝)を喫した。
劇的な幕切れとなったが、ABEMAで解説を務めた元NHK相撲実況の藤井康生アナウンサーは「しかし今日、この大一番の立つ瞬間に客席から声がかかってしまいましたね。残念ですね」と、無念そうに苦言を呈した。さらに藤井アナは「このところよく言われるんですが、集中している立ち合いに声を出すお客さんがいます。二人は構わず立ったと思いますが…」と、力士の心境をおもんばかり、残念そうに言葉を紡いだ。
昨今、マナー問題がたびたび議論を呼んでいる。今場所は四日目に横綱・豊昇龍の土俵入りで執拗な指笛が鳴り響き、翌五日目の土俵入りでも「ふぉふぉー!」という冷やかしのような声が上がるなど、神聖な儀式を妨げる行為が相次いでいた。日本相撲協会は「大相撲観戦時のお願い」として「相撲場内外でみだりに気勢を上げ騒音を出す行為」「その他相撲競技の進行及び施設管理の運営に妨げとなる、または他のお客様に迷惑を及ぼすと判断する行為」等を“お断り”としている。伝統ある国技の土俵を支える力士はもちろん、真剣勝負を見守る他の客への最低限の配慮が、今改めて問われている。(ABEMA/大相撲チャンネル)

