そして今、高羽さんは新たな一歩を踏み出そうとしている。安福被告を相手取り、損害賠償を求める民事訴訟を起こすことを明らかにした。民法上、不法行為に基づく損害賠償を請求する権利は20年でなくなる。事件から26年が経過した今回、提訴が受理されるかどうかはわからないという。
それでも高羽さんは、提訴に踏み切る。「私が放置して26年経ってしまったわけではない。お金が欲しいのでもない。後に続く人のために、やらなければならないと思っている」。
そこには、26年の間に共有した、同じ犯罪被害者遺族の実情と思いが込められている。「事件の被害者遺族の多くは突然、一家の大黒柱を失い、経済的にも困窮する。しかし、誰も助けてはくれない。一生、犯人だけを恨み続け、前向きになることもできない。そんな状況に置かれている。この国は、加害者の権利は守られている。しかし被害者の権利は、全くないがしろのまま。被害者遺族になって初めて知った」。
26年間、顔もわからない犯人を追い続けた。総額2200万円以上の家賃を払いながら、殺害現場のアパートを保管し続けた。「犯人が捕まったら現場検証させる」。その言葉は現実となった。
しかし、高羽さん自身は現場検証の場に立ち会えず、安福被告の顔を見ることすらできていない。それでも、しばらくは殺害現場となった部屋の家賃を払い続けるという。「遺伝子情報の法制化が決まるまでは、あの現場はシンボルだ。戦うシンボルだから持っていたいと思っている」。
事件発生から殺人罪の時効が廃止されるまでの10年
