先日、ネットで注目を集めた「ホラー演出学」。恐怖を生み出す撮影方法や照明、音楽、キャラデザインなど、知られざるホラーの設計図に大きな反響が集まった。
【映像】ホラー映画監督が“一番怖い”と感じる日本映画(実際の映像)
その講師を務めたホラー映画監督が『ABEMA Prime』に出演し、恐怖のつくり方について解説した。
■人が恐怖を抱く3つのメカニズム
ホラー映画監督で、日本唯一のゾンビコーディネーターの川松尚良氏は、人が恐怖を感じる仕掛けについて、3つのポイントを挙げた。1つ目は「恐怖の対象の意図がわからない」ことだといい、「目の前にトラが現れたら怖いが、噛まれるなどの想像がつくため対処ができる。しかし、意図のわからないものは怖い。映画『it』の排水溝の中になぜかピエロがいて話しかけてくるシーンも、意図がわからないからこそ恐怖を感じる」。
2つ目は「後戻りできない恐怖」だ。「幽霊を見てしまった時に、自分の現実が永遠に元に戻らないという境界線をどこで経過させるかが大事。映画の最初に『これは幽霊だ』という共通認識をみんなが持ったら一緒に戦えるが、自分しか認識していない状態はものすごく孤独で怖い。また、主人公が負う傷が後戻りできる傷のホラー映画は恐怖が薄れる。片目を潰されるなど、その後の人生をその状態で生きていかなきゃいけないという『後戻りできない状況』にすることを意識している。爪が剥がれるような、観客が痛みを想像しやすいポイントも恐怖に繋がる」。
そして、3つ目は「見慣れた姿が崩れる」という演出だ。川松氏は演技指導の際、怪物を演じる人に「羞恥心を捨てろ」と必ず伝えているという。「俳優さんは普段自分をよく見せるのが仕事だが、『自分の自我を捨てきれていない』と観客に思われてしまうと、本物の怪物には絶対に見えない。また、本当に恐怖した人は『キャー』なんて綺麗な声は出さない。恥ずかしいと思うようなリアルな悲鳴を出すことで、観客は本当に怖がっているのだと共感してくれる」。
今までに何千本もホラー映画を見てきた川松氏にとって、一番怖いと感じる作品はなにか。「映画『呪怨』のビデオオリジナル版だ。予算がない中でこれほど怖い映画が作られている。例えば子どもが口を開けているシーンがあるが、その後に襲ってくるわけでもなく、ただ後ろで声を出しているだけで、何がしたいのか対処の仕方がわからない。シリーズを重ねると具体的な描写が増えていくが、ビデオオリジナル版は具体的な攻撃をしてこず、ただこちらを見ているだけで終わるため、意図がわからずどうしようもない怖さがある」と答えた。
(『ABEMA Prime』より)
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