
沖縄の石垣島で、温暖な気候を生かして1回の田植えで3回収穫をするという、画期的なコメ作りに取り組む農家を取材しました。
コスト大幅減 再生二期作のすごさ
5月17日。茨城県水戸市の田んぼは田植えシーズン真っ盛り。青々とした苗が、大地に植え付けられていました。
照沼農園
照沼洋平さん(45)
「(Q.きょう、ここの田植えを終わらせる?)きょう終わらせます。絶対に!(終わらないと)石垣島に行けなくなります」
水戸でコメ作りを始めて24年、照沼洋平さん。その背中には「ライスプロデューサー」そして「石垣島」「茨城県」の文字が。
番組は去年6月、石垣島の田んぼで、コメ作りを行う照沼さんを取材していました。
「(Q.今年に入って石垣島と水戸を何往復している?)10往復はしてんじゃないっすか」
水戸と石垣島の両方でコメ作りを続ける照沼さん。この日は、水戸で両親とともに、早朝から夕方まで、約3ヘクタールの田植えを行っていました。
「(Q.本当に田植えは大変ですね)大変っすよ。(苗作りなど)いろんな日数がかかりますからね。人手も必要だし」
苗作りに約1カ月。さらに、田植え時に行う、苗箱の運搬や設置などを含めると、かなりの労働時間とコストがかかるといいます。
そこで、去年から石垣島で挑戦しているのが「再生二期作」です。
再生二期作とは、一期目の収穫の際、通常よりも稲を高く刈ることで茎に養分を残し、稲の再生を利用して二期目の収穫を行う農法。
通常の田んぼが根元まで刈り取られているのに対し、再生二期作の田んぼは、株が残されて、高く刈り取られているのが分かります。温暖な気候を利用して沖縄県で行われている「二期作」を進化させ、1回の田植えで2回収穫。
二期目の田植えなどにかかる労働時間とコストを大幅に削減することで、安いコメが提供できるようになるといいます。
「(Q.石垣島の田んぼは今どんな感じ?)今はもう…稲刈り間近ですね!急いで(水戸の)田植えして、急いで石垣島に飛びます!」
収穫3回!?再生三期作
水戸から約2000キロ離れた、南の楽園・石垣島。照沼さんは今年、石垣島の温暖な気候と水戸で培ったコメ作りのノウハウを組み合わせ「再生二期作」を超えるさらなる挑戦を行っていました。
5月20日、青々とした田んぼが広がる中、照沼さんの田んぼだけが黄金色に色づき、しっかりと実をつけ、こうべを垂れていました。
照沼さん
「(Q.上から見ると、ここだけ黄金色というか)明らかに違いますよね」
こちらは極早生(ごくわせ)品種のコメ「五百川」。コシヒカリに似た特徴を持つこのコメを今年、石垣島で育ててきた照沼さん。早くも収穫の時期を迎えていました。
「これだけまだ(周りの田んぼが)青い中、もう稲刈りができるっていうことで。次は三期作を狙っていきます!」
去年「再生二期作」に取り組んだ照沼さんが今年、新たな挑戦をするのが「再生三期作」。極早生品種の育成と、再生二期作を組み合わせることで、1回の田植えで3回の収穫を目指すというのです。
「(Q.これから稲刈りですか?)あす、稲を刈ろうかなって思っています」
「(Q.あす稲刈り。きょうは?)ちょっとした一つの方法をやるのに、種をまいてしまうということをやります」
「(Q.稲を刈る前に種をまくんですか?)種をまいちゃいます!」
立ちはだかる課題
五百川の種をタンクに入れて、収穫前の田んぼに入り種をまく照沼さん。そこには、再生三期作の弱点を補う秘策がありました。
稲穂の下をのぞいてみると、地面には、前日にまいた種がびっしり。
「この辺ぐらいで。30センチくらい養分をため込んでいる所を残して(稲を高く)刈れればいいかなって感じですね。まだまだワクワクは止まらないですね!」
5月21日、いよいよ今シーズン初の一期目の収穫がスタートしました。再生二期作の特徴である「高刈り」。茎が高く残されているのが分かります。
一方で、黄金色の田んぼの中に、いくつか青いままの稲穂も混じっているようですが…。
「茎の上から(稲を)食べる動物がいる。多分それでちょっと食べられた感じ。その(食べられた)株から再生してきたのがこれ。このくらいはしっかり再生するってことが分かるんで、期待は持てますね」
収穫した新米を見てみると。
「ふっくらした粒っすね。(五百川を)初めて作ったけども、時期もあっているしバッチリ」
しかし、新米を見つめる目は少し不満そうでした。
「刈っていて思うんですけど、もう少し密植で植えてみて、株で量をとっていく感じにすればもうちょい収量も上がると思うんで」
いち早く収穫できる反面、1株あたりの収量が少ない、極早生品種の五百川。さらに…。
「再生二期作だと(一期と二期合わせて)1.3倍くらいにしかならないけれども、まだまだもっと良くできそうな気もするし」
収穫のコメ 販売価格は?
一期目と比べて、二期目、三期目と進んでいくたびに収量が減っていってしまうのが、再生三期作の弱点。そこで照沼さんが思いついたのが「追加で種をまく」という方法でした。
「一つの圃場(ほじょう)で2つの農法で収量アップを狙っていく」
「(Q.これはそういう農法があるんですか?)多分ないと思います。あまり聞かないので」
「(Q.『照沼式』ですか?)『照沼式』でよろしくお願いします!」
名付けて「照沼式再生三期作」。再生した稲と、追加でまいた種を同じ田んぼで育成し、同時に刈り取ることで、二期目、三期目の収量アップを狙うといいます。
「これ一期目じゃないですか。二期目の準備をきのうからして、また(2回目の収穫の)8月下旬に同じ作業をします。(3回目の収穫は)12月下旬までに絶対に刈り取れるはずなので、そこを狙ってやっていきたいなと」
「照沼式再生三期作」で育てた、二期目以降のコメの販売価格については?
「一期目の4割減くらい(の価格)でしっかりやっていきたい。これ(照沼式再生三期作)をメインで挑戦する価値は絶対ある」
「照沼式再生三期作」の可能性について、再生二期作の研究・開発を行う農研機構は…。
農研機構 中野洋チーム長
「そうきたかぁ!と思いましたね。照沼さんの試みって素晴らしいと思っていて。再生二期作ってコストを削減できる可能性が非常に高い。だけれども注意しなければいけないのは、1回田植えをして収穫して再生してきたものを収穫すると、三期作目はさらに(収量が)減っちゃうリスクがある。そこを今回、途中で種をまくという手法で問題を解決してくれれば非常にうれしい」
「持続可能な農業を」
照沼さん
「すごく良いにおい。新米の匂いっすよ!香り良いっすねぇ。しかも全く高温障害なしですね。テンション上がります!」
高温障害のない、透き通ったきれいな新米。早速、でき上がった一期目の新米を食べます。
「いただきます!すごく風味が良いっすね。新米を食べるとやっぱり…良いっすね。もう最高っすね」
「(Q.コメ作りは楽しいですか?)すげぇ楽しいっすね。(石垣島で)ちょっと飲みに出るとみんな良くしてくれるんで。『ああ、おかえり!』とかも言ってくれたり。ありがたいですよね。またこっちで頑張れる活力をもらえる」
石垣島と水戸の、二拠点生活を続ける照沼さん。Tシャツに書かれた「ライスプロデューサー」の文字に込められた思いとは。
「(コメを)作る所から売る所まで、すべてをプロデュースして持続可能な農業をしっかり僕たちが担っていくし。この地域(石垣島)も水戸も後継者不足って中でね。そこをしっかり補っていけるように、農業をしていければと思っていますね。恐縮です!」
(2026年6月5日放送分より)
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