毎日の排泄介助…ワンオペ介護がもたらした生活環境の崩壊
およそ3年前、石橋さんは当時84歳で認知症を患った母親の介護に追われていた。彼女を精神的にも肉体的にも追い込んでいたのが、毎日の排泄介助だった。フラフラと歩く母親の後ろについて薄暗い通路を進み、「電気を点けて」と言いながらトイレのドアを開ける。便器に向かう母親に手を貸しながら「パンツもズボンも膝の下まで下げて奥まで座ってや。前座るからこぼすんやで」と声をかける石橋さん。母親はおむつをしているものの、自らの意志でトイレに行くことがほとんどだ。そのため、石橋さんが買い物から帰ると家の中が排泄の失敗によって、便が飛び散り、ひどく汚れてしまっていることもあった。石橋さんは「排泄の処理には本当に困っています。体調によってはあちこちが汚れてしまうこともあり、そのたびに掃除に追われるんです」と、その壮絶な苦労を吐露した。
家族で過ごしてきた我が家であったが、いつしか大切にしたい空間ではなくなった。ガスコンロは黒く汚れ、床の隙間にはハサミやプラスチックのクリップが散らばる。掃除に手が回らなくなっていた。雑然としたキッチンのシンクの前で、ゴム手袋をはめて洗い物をしながら、石橋さんは「安らげる場所じゃないからどうでもいい。私が住みたい家じゃない。もうちょっと気持ちが違ってたら、良い環境で住みたいと思うんでしょうけど、もうそんなんやってられへんし。私の住む場所はここじゃない。こんなところにいたくないからもうどうでもいいです」と、言葉を荒くした。
「死にたいっていうより、とにかく消えたいんです」ワンオペ介護の苦悩
