神野氏が特に心を惹かれたジュニアらしい“人間愛”あふれる俳句。
「バス見えてバス停の毛布を畳む」
「バス停に置いてある『誰でも使っていい』という毛布があって、寒いからちょっと使わせてもらっていた。バスがやって来たから、次の人のためにと思ってきちんと畳んでまた次の人へ。普通だったらもう忘れて無意識で記憶の向こうに遠のいていってしまう場面だが、見逃さずにちゃんと言葉にして残している。鋭さの中にこういう優しさが実は芯にあるんだと思わせられる句」(神野氏、以下同)
「手袋のまま割る箸の乾いた音」
「人間観察が本当によく効いていて、冬の寒さの中で割り箸を割った時に、割り箸の乾いた音がしたという感覚で描いている。ただ乾いた音がしただけではなくて、生きて食べてやっていかなければいけないけれども、なかなか苦しいわびしさが乾いた音に凝縮されていると思う」
中でも、神野氏が特に心を動かされた一句がこちら。
「痙攣の吾子の吐物に林檎の香」
「苦しくて吐いてしまった、その子の吐いたものの中にりんごの香りがすると。今、とても心配して『この子は大丈夫かな?』と思っているのと同時に、『りんごの香りがする』と感じるということ。それが並行して生きている感覚の中にあるというのが、もう一段深いところに人間の理解が潜っていて、俳人でもなかなか作れない一句だと思う」
ジュニアの俳句には、鋭さだけではない、人へのまなざしが息づいていると太鼓判を押す。神野氏は「私たちが当たり前だと思って見過ごしているものの中に、物事の本質を見出すということがジュニアさんにもできている。それは俳人が大事にしていることで『観察と発見』。ジュニアさんは“俳句に選ばれた人”だと思う。次の作品に出会えることを今から楽しみにお待ちしています」と結んだ。
ジュニアが俳句創作の舞台裏を明かす
