■「東大を目指そうという考え方にならない地域になっている」
岐阜県・垂井町在住で東大文科二類を目指す高校3年生の嶋田飛龍さんは、高校2年生まで野球に打ち込んでいたが、試合での大きなミスをきっかけに鬱になったという。そこで東大受験を勧められ、新たな目標を持った。しかし立ちはだかったのが「地方の壁」だった。
「地元の塾に行こうとしたが、面倒を見きれないと断られた。情報として東大を目指すという発想自体が来ない。そういう考え方にならないような地域になっている」と嶋田さんは語る。勉強はオンライン塾を利用しているが、「実際に行くわけではないので、強制力がない」とも明かした。岐阜県内の国公立大学が全国的にはさほど上位ではないと知った時の驚きも大きかったといい、「情報を知らないということがやはり大きい」と述べる。
石川県能美市在住で東大文科三類を目指す高校3年生の加旗俊星さんも、「自分の通っている高校や周りの地域では、専門学校や短大、ボーダーフリーの大学がメジャーな進学先で、東大進学を目指すと反対はされないが”引かれる”ことが多い。それがモチベーションを下げる原因になっている」と話す。
財団代表理事の西岡氏は、地方出身の東大生が減少している背景に「シンプルに都会の中高一貫校が非常に強くなってきている。小さい時からずっと勉強してきた人が集まっている東京の人が東大に合格し、さらに『地方の壁』があるような地域だと、東大合格が難しい状況になっている」と述べる。
SNSで情報が得やすくなった今でも、「目指して全然いいんだよというメッセージを発信することにおいて、『ドラゴン桜』という冠は適切だと思った」と財団設立の意図を説明する。さらに北海道大学の道内出身者割合が3割を切り、関東圏出身者が4割を占めているという現状も挙げ、「東大だけの問題ではない。都会との教育格差が大きすぎて、地方の子が地元の大学にも行けないという状態になっている」と述べた。
財団が今年度の6名を選ぶ際、経済的状況、居住地域、ひとり親家庭かどうかなどの属性を数値化して第一次選抜を行い、第二次選抜では面談を実施したという。西岡氏は選考基準についてこう説明する。
「学力は一切見ていない。模試の成績は見ずに選定した。この人が東大に合格したら周りの人たちにもいい影響を与えるだろう、多くの人の希望になってくれるだろうという期待を込めて支援する、いわば『ドラゴン桜的』な人を選んだ」。
西岡氏はさらに、都会の受験生と地方の受験生の違いについても言及した。「都会の子はどこか諦めていて、自分には無理だろうと思いながら勉強していたり、中学受験の失敗を引きずっていたりと、努力に枷がある。一方で地方の子はそれを突破して勉強できる爆発力がある。勉強の仕方やスケジュールの立て方、参考書の選び方すら知らなかった子が、適切なトレーニングを積むことで大きく変わることがある」と語った。
財団に選ばれたことで、嶋田さんは「勉強の考え方や計画の仕方、今まで知らなかった情報を提供してもらえたことが大きかった。塾の支援金は親の助けになるということが、自分の心の支えになっている」と語る。加旗さんは「地元の予備校がメインとする大学は地元の国立大学で、東大受験は自分がマイノリティだと思っていた。でも財団に参加して全国各地のバックグラウンドを持つ東大受験生と関わることで、そこまで悲観するほどのマイノリティじゃないと気づけた。モチベーションが高まった」と述べた。
■地方から東大に挑戦、その後の課題も
