その理由について、「少し不利で、持ち時間も大きく削られていた55手目前後の局面では、『危機』を脳が感じて心拍数が上昇するのが通常ですが、藤井竜王・名人の心拍数は逆に落ち着きました」と解説する。だからこそ、「55手目前後の形勢の捉え方、対局の流れ、持ち時間が少ないことへの焦りの有無、『危機』『報酬』『判断』をそれぞれどれ程度感じていたのか、などについて興味があります」と、底知れぬ藤井竜王・名人の思考回路への強い探求心を覗かせた。
今大会では、出場している棋士たち自身も、他者の心拍数データに興味津々の様子を見せている。現役の棋士であり医学部生でもある獺ヶ口四段にとって、客観的なデータ観察は自身の今後の対局やメンタルコントロールにどのような影響を与えるのか。獺ヶ口四段は「2つの点で、非常に面白いデータだったと思います」と分析結果を明かした。
「1つ目は、高い心拍数は高いパフォーマンスを妨げないという点です。藤井竜王・名人も最終盤には165 bpmを記録していて、高い心拍数が必ずしも悪いわけではないことがわかりました」と獺ヶ口四段。「心拍数の上昇を集中力が失われているサインとしてではなく、勝負に対応しようとしている自然な反応と捉えることができれば、より高いパフォーマンスに繋がりそうです」と、自身の実戦にも活かせるポジティブな発見を口にする。
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