■身元不明遺体の報道とアウティング
MixRainbow理事長でトランスジェンダーであるみのり氏は今回の報道について「明らかにアウティングだ」と語る。「身元特定の重要性は当然だが、そこには段階と手段のバランスが必要だ。警察の現場では歯科の治療跡や指紋といった科学的な身元特定がまず動いている。呼びかけとしても服装やピアス、身長、着衣といった情報で第一歩としては十分に足りているのではないか。プライベートな身体情報を全国にいきなりさらすことは、後々判明するであろうご遺族の方への配慮として著しく欠けているのではないか」と述べる。
一方、一般社団法人TransgenderJapan事務局長でバイセクシャルの村田しゅんいち氏は「現時点ではアウティングとは言い切れない」との立場を示した。ただし、その背景として「現在、トランスジェンダーだということが暴露されたり、あるいはトランスジェンダーではないかと疑われた段階で、様々な身に覚えのない加害者性や犯罪者性をつけられてネットで根掘り葉掘り言われるということがここ5年くらい起きている。そういうトランスジェンダーに対する過酷なバッシングのもとにトランスジェンダーが生きている」とした。
その上で村田氏は、身元不明の遺体の情報を集めるという目的があった以上、現時点ではアウティングとまでは言えないと説明する。しかし「今後、ご遺体は誰のものだという報道が出てしまったら、それは特定個人と体つきの特徴が結びつくのでアウティングになる」と指摘。身元が判明した際には特定の個人名と身体的特徴が結びつかないよう、報道機関に工夫を求めた。
また、みのり氏が「ご遺族の方が後に判明した時にどのような気持ちになるかを考えてほしい」と述べたことを受け、村田氏はアウティングの概念をより広く捉えるべきだとも語る。「アウティングは決して性自認と性的指向だけではなく、自らの体つきに関しても言える。そして、アウティングは決してLGBTに関するものだけではない」と述べ、体のプライバシー全般の問題として位置づけた。さらに「『性別』という意味での『セックス』や『ジェンダー』というものが個人情報・プライバシーであるという意識が、この社会全体にまだまだ浸透していない」とし、そのような表記をしてよいのかを確認していく社会的な土壌が必要だと説いた。
■報道における公益と個人プライバシーのバランス
