■「入社・返還不要」の給付型奨学金、BtoB企業の新たな採用・広報戦略に
日本学生支援機構の貸与型奨学金における「5年ごと利率見直し方式」などでは、金利上昇に伴い返済負担が増える傾向にある。SNS上では「奨学金の金利0.003%だったのが0.7%なんだけど、えぐくない?」「月々21000円が金利が上がり26000円弱の返済に。月5000円増えるってキツイです」といった負担増を嘆く声が相次いでいる。
このような状況下で、入社条件や返還義務のない「給付型奨学金」を新設する企業が増えている。インフラや住宅などの商材を扱う専門商社「渡辺パイプ」は今年初めて、スポーツ系の部活やサークルに所属する大学3年生を対象に、1人あたり50万円の給付型奨学金を創設した。給付された奨学金を返す必要はなく、採用試験への応募といった“入社を前提とした条件”もないという。
「スポーツに真剣に取り組んでいる学生の皆さんに当社のことを知っていただく機会を作りたいと考えました。今回の『スポーツ奨学金』は単体の施策ではなく、当社を知っていただくための取り組みの一つ。給付型の奨学金で所得や成績の制限はございません」(渡辺パイプ経営企画ユニット 広報・社長室グループの竹内爽香氏)
この奨学金には、10人の募集枠に対し130を超える応募が集まったという。竹内氏は「80以上の大学から応募があり、学生本人だけでなく、コーチからの紹介や選手同士の会話、大学からの勧めで知ったという声がありました。私たちの知らないところで話題にしていただいているのは、効果の一つだと思っています」と手応えを語る。
日本最大級の奨学金プラットフォームを運営する「ガクシー」の大工原靖宜取締役は、「企業の実態、規模感、ブランドなど、どうしてもBtoB(企業間取引)の企業は学生への認知度が低くなりがち。奨学金という形で接点を取って、むしろ学生さんから寄ってきてくれて『結構すごい会社じゃん』と思ってくれるような企業というのは非常に相性が良く、(奨学金の)導入が増えている要因でもある」と語る。
これに対し中野氏は、「貸与型の問題点がこれで解決されるわけではないので別物だが、スポーツにもお金がかかる中で、企業の取り組みとしてはありがたい。採用という目的がある中で、いわゆるバブル時代のように学生を直接接待するようなやり方よりはよっぽど健全で、企業のCSR(社会的責任)の一つとしてやるのは良いのでは」と指摘した。
電池産業の裾野を広げる…「入社・返還不要」の奨学金に応募が右肩上がり
