■「言われるのが怖い」管理職6割が育成キャンセルに至る背景
大手チェーン企業の人事部に所属するよっしー氏は、自身のSNSでの投稿が多くの共感を集めた当事者だ。「会社はいつでも新人の味方、丁寧に育てても辞める、厳しく少し言うとすぐパワハラ扱いされる、仕事と責任は増えるが給料は増えない、頑張って育成しても評価されない」という管理職の実情を発信し、同じ悩みを抱える人々からの共感のリプライが相次いだという。
よっしー氏は育成キャンセルが広がる背景について、「(指導が)ハラスメントと取られる可能性が非常に高まっている。社員が話せる相談窓口のようなものが増え、(ハラスメントの申告が)話しやすくなっているというのもある」と語る。また、自身も中間管理職として「言われるのが怖い」という感覚を持つと明かす。「相談窓口が普及した結果、直接上司に言うラインではなく、(窓口から)ループして自分に来るというのを実際に経験しているので、怖い。それが一回あると次から言えない感じになってしまう」と述べる。
会社としての対応についても、「まだ今の現状に気づくか気づかないかという瀬戸際。まだまだ対策ができておらず、中間管理職などミドル層がメンタルを病むケースが非常に近頃増えている」と説明する。
この日MCを務めたメルカリ AI strategyのハヤカワ五味は「指導する側も今までとやり方が違いすぎて、どうしたらいいか分からないという塩梅の難しさがある」と述べ、株式会社笑下村塾代表のたかまつなな氏は「アメリカの国際機関に行った知人が、上司が自分の成果物をすごく褒めてくれるのに全部修正される。ハラスメントにならないように、そういった対応をされており、それがすごく嫌だと言っていた。行き過ぎたらお互い仮面をかぶっているような感じで、ちゃんと議論できない」と話す。
東大法科大学院2年の清野孝弥氏は、ハラスメントを恐れる以外の要因にも目を向け、「仕事と責任が増えるが給料が増えない、頑張って育成しても評価されないというのは、昔から中間管理職の悩みとして上がっていたもの。改善が見込めず効果がないという回答もある。何が一番大きい要因で育成キャンセルに至っているのか単純に知りたい」と問いかける。作家の佐々木俊尚氏は「指導するというファクトベースの話と、指導される側の感情のレベルとのズレが常に生じる。感情はこもっていなくて指導しているだけなのに、指導される側はそこに感情が入っていると思い込んでしまう」と構造的な問題を指摘した。
■育成は「ブラックボックス」マネージャーが育っていない日本の現状
