■高市政権1年の経済政策への評価とGDP6位転落の衝撃
まず、これまでの高市政権の経済政策について、経済評論家で慶應義塾大学大学院教授の岸博幸氏は、「少なくとも経済政策の方向性としては、評価していいのではないか」と述べる。「経済政策で達成すべき目標は2つあり、1つは成長、もう1つは再分配だ。前者の成長に関しては、積極財政で政府が投資をして、生産性と潜在成長率を上げると明確に言っている。後者の再分配に関しては、賛否両論あるが(食料品の)消費税減税を打ち出している。達成すべき目標の両方について政策を打ち出しているため、評価していい」と見解を示した。
また、新規国債発行額についても、「過去2年間は、30兆円以下に抑えている。これは小泉政権時の2002年ぐらいに作った目標だ。20何年か経ち、予算額も増え物価も上がっている中、その目標を維持できている点は、財務省がしっかりとやっている」と評価した。
経済学者で明治大学教授の飯田泰之氏も、「しっかりとした円安を定着させたことで、雇用が大きく改善した。さらに、円安によって海外から工場が帰ってきたことで、今度は逆に働く人が足りないという状況になっている。ここになると、経済政策のフェーズは変わり、どうやって生産性を上げていくか、新しい産業を立ち上げていくかというサプライサイドの問題に焦点が移ってきた」と分析する。
しかし、日本のGDPは世界6位に下がる見通しが出ている。文筆家・佐々木俊尚氏は「日本企業は成長し、生産性も上がっているが、1980年代から1990年代にかけて国内消費が大きくなってGDPが上がったものの、最近は国外で生産して国外で稼いで、その富を日本に持ってこないで蓄積されているので、日本の労働者に富が回ってこない。その構造を変えない限り、GDPは増えない」と言及。
飯田氏も「全くご指摘の通り。金融立国の元祖とも言っていいイギリスですら、2000年前後から国内にどうやって工場を取り戻していくのかを優先的にやっていた。ところが日本はある意味周回遅れで、これからは海外展開だ、金融投資だと走ってしまった結果、主要国の中で実質工業生産力が、過去20年間でG7の中では一番上昇幅が小さい国の一つになってしまった」と同意した。
今後の成長に向けた政策をめぐっても、出演者間で激しい議論が交わされた。
近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は、「日本の生産性を著しく落としている最大の原因は中小企業と地方だ。地方創生の名目で、あまり人が住んでいないところにダムや堤防を作るなど、生産性を落とす方向の公共投資が多い」と指摘する。さらに、「アメリカのように自分たちしか作れない分野に徹底的に集中して資本を投下するのに対し、日本は既存の工場で他の国と戦っているものを今更作ろうとしている。徹底的に選択と集中をやらないと、日本経済はどんどん落ちていく」と語った。
2ちゃんねる創設者・ひろゆき氏も、国が投資先を選ぶ産業政策に対して懐疑的な見方を示す。「機械化をすることによって利益率が高い会社を作らなければならない。その状態に対し、国が補助金を出したり、経済産業省が投資したりするのはマイナスだと思っている。民間で自分たちの金で頑張ろうという会社よりも、政治と仲がいい会社にお金が入り、市場でシェアを取ってしまう。結果として独自で自力でやっている会社が潰れてしまい、産業の力をどんどん失わせる方向だ」と述べた。
これに対し、飯田氏は「その議論は20年古い」と反論する。「産業政策の評価は、ここ20年でアカデミックな世界では大幅に転換している。『産業政策ルネサンス』と言われるが、アメリカや韓国の成長産業も、かなりの部分は政府がテコ入れした会社だ。政府がある程度ガイドした産業政策が必要であり、インフラを整備する、人を育てる、政府側が需要を作るということをやることが経済成長につながる。今回高市政権が出してきたのは、コア企業を作るとか人材育成など、教科書通りなことはやっている」と主張した。
岸氏も、「中小企業は地方の雇用の担い手の要素があるため、自然淘汰だけをどんどん進めましょうというのは、地方経済にとってマイナスだ。だからそこで補助をせざるを得ない」と、中小企業支援の必要性を補足した。
■「中小企業の生産性」と「生活満足度」の複雑な関係
