■クマより深刻なシカ被害、生態系崩壊の実態
北海道においてエゾシカの推定生息数は過去最高となるおよそ73万頭にまで増加しており、農家への食害をはじめ、山の生態系崩壊や交通事故など、被害は多岐にわたる。一方で、捕獲したシカシカやイノシシのうち食肉として処理されるのはわずか1割程度で、残りの9割はゴミとして廃棄されているとも言われる。
文筆家の佐々木俊尚氏は、登山や狩猟コミュニティへの参加経験を踏まえながら、「シカの問題はクマ問題にかき消されて全然知られていないが、死ぬほど深刻だ。クマは本州の山を30年以上歩いて2回しか見たことはないが、シカはほぼ毎回どこかに行けば必ずいるくらい大量に溢れかえっている」と語る。南アルプスでは高山植物がシカに食い荒らされて消滅しつつある地域もあり、樹木の幹の皮が食べられて立ち枯れする現象もあちこちで起きていると説明する。
シカが増えた背景について佐々木氏は、天敵であるオオカミが明治時代に絶滅して以降、里山の過疎化と耕作放棄地の増加で食べ物が豊富になったこと、さらに気候変動による積雪量の減少が重なったことを挙げる。
ハンターちゃんも「農林被害や山の生態系が崩れていっているのは間近に見て感じている」と訴える。シカが絶対に食べない植物ばかりが残り、緑は豊かに見えても実質的に生態系が壊れている山が北海道にも存在すると説明した。また、、シカとの衝突や回避行動による交通事故の危険性も指摘されており、EXIT・兼近大樹も「長旅すると1頭や2頭は吹っ飛ばされたシカを見かける。車も被害に遭うし、避けた時に事故になることもある」と北海道出身者として実情を証言した。
自然保護活動家の鈴木ひかる氏は、「シカは増えているし、駆除されても横ばい状態で全然減らない。今、シカの天敵は人間だけだ」と現状を指摘する。絶滅したオオカミを再導入することの効果には懐疑的で、パックンも「イエローストーン国立公園のオオカミは、シカではなくすぐ近くの農家の牛を食っている。シカよりも取りやすいし、牛は歩くハンバーガー」と語り、オオカミ導入が周辺の家畜被害につながる可能性を指摘した。
■捕獲したシカの食肉利用は約1割、ハンターが増えない理由
