しかし、美しい景色とは裏腹に、盤上では過酷な現実と向き合っていた。「いや、キツイんですよ。負けてると」。佐々木八段が挑んだ前期のシリーズは、くしくも藤井竜王の「永世竜王」資格獲得が懸かっていた。「『時代の流れに勝てないんだな』みたいなのを感じながら、抗いたいんだけど、そうなる運命なのかなとか考えながら。結構精神的に病んでくる時で」と、圧倒的な強さを前にした当時の苦悩をストレートな言葉で吐露した。
挑戦者にかかる重圧は盤上だけではない。現在、初タイトルを狙う挑戦者の服部七段も、直近10局の公式戦成績は5勝5敗。過密日程の中でタイトル戦と他棋戦を並行する難しさについて、佐々木八段は「私はこの時期は結構やばかったですね。連戦連敗みたいな。休んでもあんまり疲れが取れなくて、タイトル戦に集中したいのに、他棋戦が入ってくる。そうなると、ただ行くだけみたいな感じになっちゃって」と深く共感する。相手もトップ棋士である以上、「藤井さんの対策をしてるからといって、他棋戦も行けるかというと、対策がまるで違う。さらに移動もある」と、コンディション維持の過酷さを力説した。
だからこそ、同じ条件どころかさらに過密な日程をこなす藤井竜王の“異常性”がより際立つという。
「当時の心境聞けるの貴重だ」「1回挑戦するだけでそんなに疲れるんだ」



