7月17日のボストン・レッドソックス戦に登板したニューヨーク・ヤンキースの田中将大。6回を投げ3安打、1回の本塁打による1失点のみで押さえ今期7勝目を挙げたが、その投球内容よりも全米メディアが注目を集めたのが田中が投じた余りにも常識ハズレの軌道を描いた「魔球」だった。
ブロック・ホルトとの対戦で見せたボールはシンカーだが、本来の軌道から大きく外れ逆スライダーぎみに切れ味鋭く外角に入り込む。キャッチャーのオースティン・ロマインも示している位置から、大きく変化した球にすんでのところでキャッチする程変化しており当然ながら打者は全く手が出ない。
USA TODAYは「えげつない変化」とこのボールを評したが、その他のFOXやCBS、さらにはMLB公式のCUT4なども次々とこのボールについて言及し賞賛している。この一球に関してはかなり極端な変化球で「奇跡のボール」と言わざるを得ないが、このセンセーショナルなシンカーは、田中の昨シーズンからの地道な改革の成果と言っても過言ではない。
前提として言えるのは、メジャー入りしてから2年の段階で、日本で通用していた真っ直ぐの速球フォーシームがメジャーのマウンドで被安打率が最も高く通用しなかったことにある。投球内容をみても2014年 25.1%、2015年 19.4%あったフォーシームが今シーズンここまで2016年は2.9%まで激減している。
フォーシームに見切りをつけ投げる比率を下げた結果、今シーズンはスプリット、スライダー、シンカーをより均等に投げ分けるスタイルに変更。年々スプリットの依存率は上がっているが、一方で今年はシンカーに新たな活路を見出しているのは約2割から3割へと徐々に増えている投球数からも明らかだ。
昨シーズンの去年の中盤に使い始めた頃には「数球良いボールがある」程度だが、今シーズン前半には制球力も増し、結果的に打たせて取るピッチングスタイルへの変更にも役立っている。
キャリアを見据えた投球スタイルの変更と、同時にシーズン中の安定したローテーションの維持という目標を同時進行で行なってきた2016年の田中将大だが、シーズン後半戦、プレーオフ進出を見据えた上で、このシンカーの取得はかなり重要なターニングポイントといえそうだ。