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 熊本地震から間もなく1年。「AbemaPrime」では、被災者とメディアの今後のあり方を考えた。

 まず、避難生活を経験した若者たちに、地震当時、どのようにして情報収集していたのかを聞いてみた。熊本県益城町に済む甲斐太輝さん(21)は「安否確認で便利だった。友達に聞きたいこともすぐ聞けた」として、LINEが大きな役割を果たしたと話す。甲斐さんの友人の桑原孝太さん(21)は、「聞くだけで分かる情報を伝えようとするから便利。元気が出る曲も聞けて精神的にも助かった」と、災害時にラジオが果たす役割の大きさを実感したようだ。

 ヤフー株式会社の池宮伸次氏は、熊本県内で地震発生直後の3時間に検索されたキーワードを分析。「車と家、どちらが安全なのか?といったものが多かった」と振り返る。熊本地震は夜中の発生だったことから、明るくなるまでは「命をどう守るべきか?」という切迫感のある検索が増えていたという。発生直後の被災者たちは、頻発する地震から生き延びる術を探していた。

 長引く避難生活の中、被災者が必要とする情報も変化していく。益城町在住のパフォーマーmaaさん(28)は「お風呂の情報が欲しかった」と振り返る。車中で過ごしていたという桑原さんも「給水車が来る時間や量が決まっていたんですが、その情報が知りたかった。エコノミークラス症候群の専門的な知識も必要だった」と話す。また、SNSで情報収集している中では、困ったこともあったという。甲斐さんは「今、スーパー銭湯が空いてますよというツイート見て行くと4時間待ち」と話し、SNS上の情報は古い情報や誤った情報が出回っている場合があり、精査が難しいことがわかる。

 一方で、テレビが伝えた情報は被災者にとって、今すぐに必要なものではなかったという。AbemaTVは、熊本地震が発生する3日前に開局、地震後はテレビ朝日の報道特別番組を放送したが、被災者が必要としていた情報との間にギャップがあった可能性があることもわかった。

 当時避難所にいた熊本市の石見竜太郎さん(26)は、「テレビのアナウンサーは、現地の映像を見ながら『今、〇〇しているようです』など、起きていることを実況している感じだった。県外の人や被災者じゃない人のための情報だと感じた」と話す。彼らが求めていたのは、命の守り方や避難所の状況、物資がどこでもらえるのか、何分待ちなのか、といった、現地の"生活情報"だった。

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 実際に、10000人にアンケートを取ったところ、AbemaTVを視聴したのは1371人、会見や災害情報を見たことがあるという人は233人に留まった。「インターネットテレビ」であるAbemaTVが、災害時にも本当に有益なメディアになるためにはどうすればいいのだろうか。

 NPO法人リディラバ代表の安部敏樹氏は、「避難先などでテレビが無いとき、手元にある端末で確認できるのは便利。アプリなので、プッシュ通知もある。ただ、視聴者が当事者と非当事者に大きく分断してしまうので、こういうときだけはチャンネルを分け、被災者にとって価値のあるローカルな情報だけを流すチャンネルを臨時に開設するのがいいのでは?」と話す。

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 慶応大学特任准教授の若新雄純氏は「災害時に大事なのは、いますぐに必要な情報を直接検索することができること。発信されている情報と、それを必要としている人が検索で結びつけられるのがインターネットの利点。SNSには、どんなにマニアックな地域の情報でも誰かがつぶやいていたりする。YouTubeを見るときだって、みんな検索から入る。AbemaTVにないのはそうした機能」と指摘する。

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 テレビは受け身のメディアだけに、検索などではたどり着けない未知の情報を知ることができ、その情報に一定の信頼性があるという点が強みでもある。

 元朝日新聞記者で、J-CASTニュースやニコニコニュースの編集を手がけてきた亀松太郎氏は「SNSは一般の人もどんどん発信していける、ある意味ネットの究極の形。ただ、ネット上にはその逆の情報も絶対に必要なので、AbemaTVにはテレビ的な発信に徹してもらうほうがいいのではないか。ネット的なものに寄せていくのではなく、テレビ局でしかできない、テレビ局がやっているからこそ信頼できる、そういうものを流してもらうのが重要」と話す。また「災害時には、放送で流した情報をテキスト化して掲載することで検索できるようにもなり、そこからさらに番組や映像と連動させるといった展開も可能」と指摘した。

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 若新氏も、NHKのTwitterアカウント「NHK生活・防災」が役立ったという事例から「NHKという信頼の軸があり、なおかつテキストだったのが良かった。AbemaTVにはコメント欄もあるので、機能面ではネット的なものをより取り入れて、コメントやテレビ朝日の情報が流す情報を連動させることで可能性が広がる」と提言した。(AbemaTV/AbemaPrimeより)

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