将棋の加藤一二三九段(77)が6月30日、東京都渋谷区の将棋会館で引退会見を行った。会見で加藤九段は、歴代最多の連勝記録を樹立した中学生棋士・藤井聡太四段(14)について「素晴らしい後継者」と話した。
―藤井四段について
昨年の12月24日、竜王戦で彼のデビュー戦でした。2つ感心しました。1つはおやつの時間で、私がチーズを食べ始めたところ、ちょっと間をおいて、彼はチョコレートを食べ始めたんです。そこで私は感心しまして。藤井四段が先にチョコレートを食べて、私がチーズを後に食べても、まったくマナー違反でも失礼でもないんですが、藤井四段は私がチーズを食べ始めるのを待って、彼がおやつを食べ始めたので、非常に好感を持ちました。藤井四段はなかなか、先輩に対する気遣いができているなと、感心しました。
もう1つは対局中、1回だけ終盤戦で藤井四段が私の顔を一瞬ピタッと見た瞬間があったんです。「え?」と視線で何を送っているのかと盤面を見ました。5分ぐらい盤面を見たところ、「そうか」と思いました。『加藤先生、あなたの方がおもしろい(優勢である)と思っているんでしょう。だけどもこの将棋は私、藤井聡太が勝っていますよ』ということを、目で送ってくれたんですよ。この少年、これはすごいと思って非常に感心にしました。
破竹の連戦連勝で、優れた秀才型の素晴らしい棋士だとは思いますが、10連勝、20連勝、29連勝するとは、まったく想像はしませんでした。彼が勝っていく中で、藤井四段の将棋を全部研究しました。彼が秀才型の天才だと悟りました。作戦が非常にうまい。スピーディーで、すぐに有利に立つ戦い方を身につけました。彼には欠点がひとつものないんですよね。
うれしいことは、私についてありがたいコメントを出してくれている。この前も、「加藤九段が引退されることは寂しい」と言ってくれました。私もさすがに引退は覚悟していることですがら、はっきり言って割り切っているんですが、藤井少年から寂しいとうことを聞きますと、ちょっとほろっと哀歓というか、そういう空気が漂ってくる。あの少年が、引退する私に対して寂しいと言ってくれたことは、素晴らしい後継者を得たと感動しましたね。
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