■死を持って償うのが死刑ですから、反省は求めません

 想像を超える体験を経て、藤田氏は死刑の是非についてどう考えているのだろうか。

 「死刑囚というのは、生きるか死ぬかの恐怖で極限の精神状況におかれていますから、廊下を歩く刑務官の足音の違いにもビクビクしています。死の恐怖から逃れるために宗教に救いを求めて、ある意味での悟りを得て、素直に執行に従う人もいますが、中には脱獄を試みたり、自殺したりする人もいる。それほど神経を研ぎ澄ませる中で、改心するゆとりはないわけです。反省など机上の空論、理想論です。死を持って償うのが死刑ですから、反省は求めません。死刑になるだけの残虐な犯罪をやる人というのは、通常の精神や性格ではありません。教科書のような反省、悔悟というものを求める方が酷で非現実的なことだと私は思います」

【写真・画像】「何十年も経ちましたが、全て鮮明に覚えています」元刑務官が語った死刑執行の瞬間 9枚目
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 その上で藤田氏は、こんなエピソードも明かした。 

 「死刑廃止論者の弁護士さんが唆して、精神病を装って執行を免れようとしていた人もいました。いよいよ執行の日、心配して見ておりましたら、本人は『執行か、そうかわかった』と、素直に応じたんですね。こんなこと言ったら申し訳ないですが、朝から晩まで精神病を装っていたあの姿は何だったんだろうかと、可哀想に思いました。彼は何も抵抗せず、堂々と逝きましたよ」。

【写真・画像】「何十年も経ちましたが、全て鮮明に覚えています」元刑務官が語った死刑執行の瞬間 10枚目
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 藤田氏の生々しい体験談に、日経ビジネスの柳瀬博一氏は「先進国では日本とアメリカ以外、死刑を執行しなくなっている。どういう理由があるにせよ、戦争以外で国家が人を殺めることに対する否定的な見方が社会通念になってい」と指摘した上で、「藤田さんのお話しを伺って、自分の死以外に罪を贖うことが許されないという、死刑制度の持っている酷薄さを感じた」とコメントした。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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“死刑執行”の苦悩と葛藤 元刑務官が激白!
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