苦労人の若手棋士が、最年少タイトル記録保持者の胸を借りる。将棋の若手棋士7人と40代のトップ棋士がチーム戦で戦う「若手VSトップ棋士 魂の七番勝負」(AbemaTV)で、佐々木大地四段(22)が対戦相手に史上最年少の18歳でタイトルを獲得した実績を持つ屋敷伸之九段(45)を指名した。プロ歴の浅い順に若手棋士がトップ棋士を選ぶルールの中、「勝負術が長けている先生」と尊敬する屋敷九段に、プロデビュー1年半の新鋭が挑戦する。
2人は共通点がある。将棋界の登竜門、棋士養成機関である奨励会には、お互い中学生になってから入会した。第一人者の羽生善治二冠(46)、史上最多の29連勝を記録した藤井聡太四段(15)らが中学生でプロデビューしたことから分かるように、奨励会入りは小学生が大半。遅咲きともいえる中学生から、プロ棋士への道を走り始めた。
だが、奨励会入りからプロデビュー後まで、状況は大きく異なった。屋敷九段がわずか3年足らずで奨励会を駆け抜けプロとなる四段昇段を決めたのに対し、佐々木大地四段は8年弱を費やした。また、デビュー後から快進撃を続けた屋敷九段は、わずか2年足らずで史上最年少の18歳6カ月で棋聖のタイトルを獲得。一方、佐々木大地四段はプロ入りを決めたものの、名人戦・順位戦の下位リーグにあたるフリークラスからのスタート。約1年弱でC級2組への昇級を果たし、ようやく念願の順位戦を戦えるようになった。
中学生からプロを目指した2人だが、エリート街道をひた走った屋敷九段と、苦労を重ねた雑草魂の佐々木大地四段、プロの世界では対照的な道を歩んでいる。佐々木大地四段も自ら「(出場者の)ほとんどの人が棋戦を優勝されたり、高い勝率で活躍されていたりする方ばかり。自分は実績、実力ともに一番下」と語った。それでも地元長崎・対馬へと活躍を伝えたい気持ちは強い。対馬でも視聴が可能なネットテレビ局AbemaTVでの対戦に「対局を見てもらえる機会はなかなかない。一生懸命にやって、見ていただいている方が満足するような、よかったと思ってもらえるような将棋が指したいですね」と意気込んだ。
今回の七番勝負が、全国デビューと言ってもいい佐々木大地四段。師匠・深浦康市九段が対局を見守る中、屋敷九段に勝利することができれば、その名は対馬だけでなく日本中の将棋ファンに知れ渡る。
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