2017年シーズンから、プロ野球・横浜DeNAの主催試合の生中継を開始したAbemaTV。地上派での野球中継が減少し、有料のBS局やCS局、ネット配信での中継が増える中、完全無料で視聴可能ということもあり、横浜DeNAファンだけでなく対戦する他球団のファンの視聴も増えている。これまでの中継同様に実況・解説で進行するが、特徴的なのは視聴者が自由に投稿できるコメント欄の存在だ。このコメント欄によって、これまでの野球中継とは大きく異なる現象が起きている。
視聴者が投稿するコメントは、実にバラエティーに富んでいる。試合に関するものから、その日の天気、元選手である解説者への質問、選手を応援する大量の数字や絵文字まで、思いつつまま感じるままのコメントが並ぶ。この様子を見て実況や解説が反応すると、さらにコメント欄が盛り上がる。
番組スタッフ（以下スタッフ） コメント欄を通じて、言葉のキャッチボールができることが一番の楽しさだと思います。ご出演頂く解説者の方々も、自分が話したことに対して反応があるということを面白いと思って下さる方も数多くいます。視聴者の方の盛り上がりを放送席でも感じられることは、リアルタイムでのやり取りがあればこそだと思いますね。森本稀哲さんがご出演された時には、アンケート機能を使って、試合前に「今日はどんな解説を聞きたい？」と聞いたこともあります。これも、リアルタイムでやり取りが可能だからできたことです。
野球中継は、試合だけでも約3時間超の長丁場。状況を追いかけるだけでは、実況や解説が「ネタ切れ」を起こすこともしばしばだ。また、時にはコメントによって番組進行が助けられたり、より充実したりすることもあるという。
スタッフ 特に印象に残っているのは、8月13日の試合です。巨人の阿部慎之助選手がマツダスタジアムで行われた広島戦で2000本安打を達成したのですが、記録を達成した瞬間にDeNA×阪神戦を中継しているAbemaTVのコメント欄に「阿部選手おめでとう！」で埋め尽くされました。その情報をきっかけに、放送席でも会話が弾みました。そのほかにも、解説の方の現役時代の成績など過去のデータまで、放送席から問いかけると教えてくれたりするので、かなり助けられていますね。
視聴者によるコメントは、自分が持つ野球の知識を披露する場としても楽しまれている。その詳しさにスタッフが驚かされることもしばしばだ。
スタッフ 僕自身、プロ野球が好きで、それなりに詳しいとは思っていますが、コメントを下さる方々の知識量がものすごいことにいつも驚かされますね。その分野はセイバーメトリクスのようなデータ系のものから、細かい選手の情報まで多岐に渡ります。何人か、制作スタッフとして参加してくれないかと思うほどです（笑）
豊富な知識を誇る視聴者を満足させるために、スタッフもいろいろと下準備を重ねている。1つのパターンは参加型だ。
スタッフ ネタを紹介しただけで終わらないようにできるのが理想なので、可能な限り追加情報や、より興味を持ってもらえるような企画を考えたいと思っています。最近だと、パットン選手がヨガを行っている「THE BAYS」の情報も一緒に紹介したり、シーズン中に体重が減ってしまう梶谷選手の体重を維持するアイデアをコメントで募集したりしています。視聴者の方が参加できるようなものを今後も用意できたらとは考えています。
テレビでは主音声、副音声を使い分けて、幅広い層に野球を見せる工夫を重ねてきた。今後はコメント可能なネット中継が増えるにつれて、視聴者も番組を作り上げる大事な“スタッフ”となっていく流れも強まりそうだ。
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